ひぐらしを凌駕するこの「凄さ」 - 『うみねこのなく頃に episode3 Banquet of the golden witch』


\(。 ∀゚)/\(゚∀。)/\(。∀゜)/\(゚∀。)/\(。∀ ゜)/

\(。 ∀゚)/\(゚∀。)/\(。∀゜)/\(゚∀。)/\(。∀ ゜)/

\(。 ∀゚)/\(゚∀。)/\(。∀゜)/\(゚∀。)/\(。∀ ゜)/

\(。 ∀゚)/\(゚∀。)/\(。∀゜)/\(゚∀。)/\(。∀ ゜)/


 ドッカン! ドッカン! ドッカンドッカン!!!!

 もうドッカンドッカンです! 想像力が及びません。なんですか、これ? 私は何を見てるんですか?

作劇のダイナミズム

 ストーリーテリング。その凄まじさに、本当に唖然とします。第2話の時点でモニタの前で声を上げちゃうくらい凄かったんですけれど、でもその時はここまでだろうという感覚もありました。第2話では"外枠の提示"がされたのであり、これからお話はこの枠の中で進んでいくんだろうと。そういう理解の仕方をしていたのです。

 それなのにこの第3話は、その枠をさらにあらぬ方向へと破り抜いてしまいました。言い換えれば、前話で用意した枠をかなぐり捨ててて別の枠をねじ込んだようにも見えます。思えば、ひぐらしだって毎回枠を取っ替え引っ替えしてプレイヤーを驚かせていました。その同じ手に、私がまたまんまと引っかかったということなのかも知れません。

 ただ、その作劇のダイナミズムは、ひぐらしの頃と比べても間違いなく進歩しています。ひぐらしで一話ごとにひとつの枠が当てはめられていたとすれば、うみねこではある枠の中で進んでいたお話が突然別の枠の中に流し込まれるということが何度も起きます。単に自由奔放に書き散らしてるんじゃなくて、わざとプレイヤーに枠を感じさせ、その上で絶妙なタイミングで枠を転換する、という技は並大抵のものではないと思います。

派手さの裏の安定性

 ドッカンドッカン言いましたけど、その裏で地盤固めも用心深くなされています。見た目の派手さに反して、この世界のシステムはかなり安定した設計がなされているのです。逆に考えれば、この隙のないシステムが最初にあるからこそ、他の部分で思う存分暴れ回れているのだとも言えるでしょう。

"あの"ひぐらしの甘さを顧みると、よくここまで脇を固めたなあと感嘆すら覚えます。今回提示されたルールを見る限りでは、ここから新たなちゃぶ台返しが来ない限りしばらく綻びもなさそうです。「アンチミステリーVSアンチファンタジー」というあまりに挑戦的な謳い文句を、この作品は本当に全うしてしまうかもしれません。

 根底のところで、隙がない。だからこそ無茶もできる。そういう構造の在り方が、本作とひぐらしの最大の違いだと思います。

演出まわり

 演出については前回ちょっと空回りしてるところがありましたけど、今回はうまく抑制が利いていたと思います。テキストの展開に合わせてBGMのボリュームが大きくなる技などは、本当に単純な演出なんですけど効果は絶大でした。曲がまず良いんですけど、その使い方がまた尋常ではありません。プレイ後に音楽室でBGMを再生しているだけでも感慨に浸ることができて、曲にとっても幸せな作品であると思います。

 派手にドンパチやるシーンも、今回は「技術の弱さを見せ方で補う」竜騎士さんの持ち味が発揮されていました。前回は燃えよりも先に笑いが出てしまうことが多かったですけれど、今回は格好良さの方が勝っていて素直に楽しめました。画面効果をそのまま使うのではなく、抽象的な"背景画像"自体を演出に使うという手法にはさすがに泡を吹かされました。まだこんなやり方が残ってるなんて、と驚かされることが今でもあって、ここでもいまだに成長し続けていることが感じられます。

お話

 第1話と第2話に関しては、情動的な面で物足りなさがありました。ストーリーの展開はさすがと言うべきものなのですが、やはり登場人物の描き込みがまだ浅い段階であることもあり、プレイヤーの感情に深く斬り込んでくるようなシーンはあまりありませんでした。ひぐらしに比べてだいぶメタな視点でお話が進んでいるので、そういうところで登場人物に感情移入しきれないという問題もあったかもしれません。

 それが今回で、遂にひとつの殻が破られたなという感覚がありました。少々予想外の方向でしたけれど、竜騎士さんの読者心理掌握術が見事に決まっていたと思います。

 ただ、作中でも露骨に言及があるように、今回はかなり計算尽くで意図的に「泣かせに来た」という面がありました。泣かせようとして書かれているんだから、泣かされて当然みたいなところもあり、まだまだ底は見えていないと思います。

 なにせひぐらしでは、お話が終わってスタッフロールが流れ出した瞬間に緊張の糸が切れてはじめて涙がだだもれたり、途中経過のワンシーンに過ぎないところで勝手に状況の背景に思いを巡らせて泣きながら痙攣したり、全部お話読み終えて数日して感想書いてたらまた涙だだもれてきて痙攣したり、ということを経験したのです。早くうみねこも、そういう域に至って欲しいなあと思います。

まとめ

 今回は総じて空気読めてる時の竜騎士さんでした。いまだに成長を感じさせ続けるというのも凄いですし、なによりこのシステムを考え出して実際に作品の形で発表しているというのが凄いです。

 正直なところ、情動的な面で私はまだ本作よりもひぐらしの方に思い入れがあります。触れていた期間が長いですし、げろげろ泣かされましたし、ひぐらしの方が「好き」という感情はまだ揺らぎません。

 でも、ひぐらしうみねこ、どちらが「凄い」作品かと問われれば、私はもう今の時点でうみねこの方が「凄い」と断言します。だって、どちらかというと勢いとセンスを武器に戦ってきたひぐらしの作者が、"論理"という得難すぎる武器を獲得して戻ってきたのです。ザンギエフバルログ並みのスピードを獲得したようなものなのです。

 本作はひぐらしに負けず劣らず荒唐無稽ですけれど、その乱暴さの中にもひぐらしに欠けていた"芯の通った論理"があります。そういった部分でひぐらしで呆れてしまった人は、もう一度だけ振り返ってみてもいいのではと思います。

 あー、あと本作の登場人物は熟年熟女ばっかりでキャッチーな方向に持っていこうという意志がさっぱり感じられない! 玄人志向ですばらしい! ということを1話の時点で主張したんですけれど、どうにも予想外の方向にきな臭くなってきました……。魔女ベアトリーチェの描写が異様に魅力的というのがまずあるんですけれど、それ以外にも何か色々……。こっち方面でも竜騎士さんの凄さは健在ですというかまた一線を越えたような……竜騎士さん頭おかしい←結論

おまけ:ゲーム中ゲーム

 上の方に書いたシステムの安定性と密接に関わることとして、本作では特定のルールに基づいて推理合戦が進められていきます。この推理ゲームは端から見ているだけでも抜群に面白いんですけれど、やはりCPUvsCPUの戦いを見ているような感覚は拭えません。自分ならここでこう言ってやるのに! とどうしても思えてきます。

 あわよくばそのルールだけを取り出して人間同士でプレイしたいという欲求に駆られるんですけど、よくよく観察してると論理的な粗がないでもないので、そのままの形では人vs人のプレイには耐えられないかもしれません。誰かが人間向けのルールにカスタマイズしてくれるのでは……と期待しています。皆さんがんばってください。