『空の境界(上)』 - そのなんとまっすぐで幸せな小説であることか

空の境界(上) (講談社文庫)

 とてもまっすぐな、ストレートな*1、直球な*2小説だと思います。衒学的である、異形である、語り口がまどろっこしい、そういった点は確かにそうなんですけれど、それにしてもなんとまっすぐに書かれた小説かと思います。

 恥も照れもなく、自分のかっこいいと思った"こういう世界"を表現しようとしています。そしてその試みは概ね成功しているのでしょう。書きたいものを書いている、作者さんのこの姿勢はとてもまっすぐなものだと思います。もうほんと、眩しいくらい。

 で、しかもこの作品、これだけまっすぐな小説でありながら多くの人に読まています。しかも七部作で映画化とか、普通なら採算とれない以前に提案段階で弾かれるような企画が実際のビジネスとして通ってしまう。そういうところまで込みで考えると、なんと幸せな作品だろうと思います。

*1:同じ。

*2:同じ。