『学校を出よう!』

学校を出よう!―Escape from The School (電撃文庫)

 ハルヒ未読絶望系既読。わりと楽しめなくて戸惑いました。博物士さんのところで言及されてた感じなどからして一筋縄でいかない作品なんだろうなとは思ってましたけど、たしかに難易度は高いです。

 一人称のだらだらした語りは一文一文が面白ければ何も事件が起きなくても読者を牽引する力になりますが、本作ではまだ冗長さが足を引っ張っている段階。核にあるSFのアイデアも、土台としては面白いもののその上に何かを築けているかというと。変なものの片鱗が見えはするんですけれど、まだ発現にまで至っていないという感じです。

 主人公は積極的には何も望んでいない人間ですが、周囲の連中はなんやかやと騒ぎながら主人公を巻き込みます。挙げ句には、君の望みを代弁してあげるよみたいな知った顔をして押しつけがましく主人公に同意と決断を迫ってくる周囲の状況。こういったところに「理不尽に対する怒り」が表現されているとすれば、それはなるほど納得できるものです。この感覚は、たしかに谷川さんに独自のものであるかもしれません。

 ただ、やはり本作の時点では、この感覚は十分に表現できていない感があります。というか単純に、この段階ではまだ読み物として十分に成熟してないという面が多分にあるのでしょう。一巻で切ったらもったいないという忠告もありますし、もう少し様子を見るべきなのかなと思いました。