解体さんとあるきこ
「あの、かいたい、また解体させていただけませんか?」
「え、解体?」
「そう、か、解体」
そういえばたしかに、今まで何度か解体させてあげたことはあった。あるきこは不死身ではないので、では今なぜ生きているのかという疑問はある。しかしこういった辻褄の合わないことは、あるきこにとって珍しいことではない。つまりごく日常的な矛盾である。とはいえ痛いのは嫌なので、あるきこは断ることにした。
「ごめん、今はちょっと」
「そう、そ、それじゃ、また今度お願いしますね。い、いつもありがとうね」
このように、あるきこが解体を許可することはない。しかし過去や未来において、あるきこはたしかに解体されている。今解体されることはないのであるきこにはなんの痛みもなく、過去と未来で解体できるので解体さんも満足である。あるきこと解体さんは、このように満ち足りた充足関係で繋がっている。