本日一信と神話の泉

 あるとき、とてもアルセスくさい廷臣が玉座の前に進み出ました。
「神話の泉でございます」
 アルセスくさい廷臣は珍妙な泉を差し出しました。室内で非常識なことこの上ありません。このようなものをどうするつもりかと私は問いました。
「お手を差し入られなば神話を引きずり出せましょう」
 これはまた面妖なことを言い出します。「差し入られなば」なんて言葉初めて聞きましたが十中八九誤用でしょう。こんな物言いがますますアルセスくさいので私は訝り、訝りつつまあいいやと泉に右手を突っ込みました。するとなんか出てきました。

 これはいかなるもんでございましょう。
「まさに神話にございます」
 神話が泉から引っ張り出すものだとは知りませんでしたが、アルセスくさい奴のやることはこのような罠に満ちています。このようにして、私は故郷についてのお話を引っ張り出していくことになりました。