コーレントラウスの暴走密室

 コーレントラウスは自らの作り上げた密室に閉じ籠もった。世界を隔絶し、自身のみが存在するこの密室を世界とした。この閉塞をもって彼は世界から自由になったはずであり、事実その通りであった。だがしかし彼の引きこもった密室には車輪がついていた。密室は暴走し、公道を縦横無尽に走り回って人々を轢き殺して回った。密室に籠もったコーレントラウスは己がいかなる振る舞いをしているか最早関知せぬし、彼に関知させるすべもない。しかし暴走密室は今日も人を襲い続ける。この逸話が示すものは、かくのごとき一方通行の認識である。