『未来妖怪 異形コレクション』
はじめて読む異形コレクション。今回のテーマは「未来妖怪」。ワードだけ提示するから意味は各自で考えましょう、という類のテーマ設定なので、各々の作家が独自に解釈する「未来妖怪」像が楽しいアンソロジーです。「未来」の解釈、「妖怪」の解釈、どちらも一定することはありません。
特に「未来」については
- 「現在」から見た【未来】- SF的世界観の中に潜むの妖怪
- 妖怪の跋扈していた「過去」から見た「未来」=【現代】という時代の性質に適応し、インターネットなどに出没する妖怪
- 時代とは関係なく、「時間をまたぐ」類の性質を持った妖怪
といくつかの携行に分類できて、これらの内どれを想定してるかでお話の方向性もだいぶ異なるものになっていました。
以下興味深かったもの。
「ウエダチリコは変な顔」牧野修
牧野修さん。いつも通り。牧野通り。「美しくなりたい」と暴走する中盤までのストーリーラインはよくある話ではありますけれど、その当人に「私が、自分に起こっていることを調べようとしない馬鹿に見えますか」と言わせるところが凄い。あと性感マッサージ店の名前が『ハンドパワー』ってなんというこれひど。
「恋する蘭鋳」平山瑞穂
気持ち悪いときの平澤さん。解説で井上さんが言及してるとおり、『ラスマンチャス通信』第一章の「兄」ばりの異形の描写が半端ないです。なんの悪意もなく、ただ生きてるだけで醜悪な姿を撒き散らさずにはおれない異形の存在は切なく同情さえ引きますが、その切なさや同情を織り込んでもなお醜悪な存在であるというやり切れなさ。
「奴等」タタツシンイチ
最後の一行のやられた感。
「ぬっへっほふ」朝松健
足利将軍十五代の歴史を謎の妖怪と絡めて順番に語っていく、という形式がまず面白く、最終的に判明する「なぜそれが未来妖怪なのか」の理由も面白いです。ただし発想がやや清涼院御大ちっく。最後のオチも御大ちっく。これひど!