当たり前のように臓物だらけ -『臓物大博覧会』

臓物大展覧会 (角川ホラー文庫)

 いつも通りの小林さん短編集。タイトルの印象とは反し、「臓物に注目した作品群」というまとまりにはなっていません。いつも通りの小林さんが、特になんの縛りもなく綴った短編の集合と考えた方がしっくりきます。十作中、最初と最後の二作が書き下ろしなだけで、後は出典も完全にばらばらですし。

 そして、そうやって"普通に書いた"作品を適当に集めてきただけのように見えるのに、にも関わらずどの作品でも当たり前のように「臓物」が出てきてしまう。だから結果的に「臓物大博覧会」というタイトルが成り立ってしまう……という、小林さんのえげつない作家性を体現した作品集であるとも言えそうです。

 小林さん書く「会話」は、実在の人間同士の会話としては明らかに不自然なんですが、その不自然さ自体が異様なユーモアを醸し出しています。「チンピラがなんでこんな論理的な会話してるの」って突っ込みたくなるようなおかしさというか。一般にホラーというと「不条理」を全面に押し出したものを想像しますが、小林さんの作品では、「過剰な論理性」が現実と乖離した奇妙な感覚や酩酊感に強く結びついている気がします。

 そうかと思えば、「攫われて」みたいに、ときどき驚くべき感傷を引き出すこともあり。小林さんの作品は、文庫で出てる単著は全部読んでいますけれど、未だに底のしれない作家さんだなあ……と改めて思い知らされました。