「死にたいと騒いでる奴ほど死なない」という主張への反論をひとつ

 この記事を見て、似たような話はタイトルのような件についても言えそうだな−と*1。「死にたい」と言ってる人の死亡率など、実際の統計データは知らないので、その辺は詳しい人に任せますが……。

  • 頻繁に「死にたい」と訴える人の中で、実際に1年以内に死んだのが仮に300人に1人*2だとして
  • 残りの299人はすぐには死なないから、「死にたい死にたいという奴は死なない」という印象が生まれる
  • ただし日本人全体で1年以内に自殺するのは5000人に1人くらい

 みたいな話だと思ってます。これを「死にたいと騒いでる奴ほど死なない」と言うのは、「今まで交差点で100回信号無視したけど事故を起こしたことはないから、信号無視してる間は事故にならない」とか無茶を言うのと、構図としては同じ論法です。

 ネガティブ寄りな精神状態の人ほど、死にたいと漏らす頻度が高まるのは全く自然なことのはずです。あえてそうせずにいきなり死ぬ人、というのも中にはいるのでしょうけれど、そういう人の存在が「死にたいと言う人間ほど死なない」という主張を肯定する根拠になるわけではありません。*3

 本当なら、「死にたい」と漏らしてしまうような精神状態に陥ってしまっている時点で、既に十分に問題のある事態です。そういう人こそ周囲のサポートが必要なはずなのですが、なぜか第三者は「どうせ死なないから大丈夫」という基準で話をしがちになるようです。自殺というのは本当に最悪の事態であって、そこに至るまでにいくつもの段階があるはずなのですが……「実際に死んだか、死ななかったか」だけで判断するから、変な印象が生まれるのでしょう。


 「死にたい」的なSOSアピールを黙らせようとするのは、「俺を煩わるな、死ぬなら黙って勝手に死ね」という態度に等しいでしょう。人生リソースは有限ですから、こういう態度は否定されるべきではなく、決して責められるものではないと思います*4。でも、それにしても、「騒いでるうちは死なないんだろ」と問題自体を矮小化して回避するような言い草は、どうにも納得いかないのでした。

*1:いろんな反論の仕方があって、既にいろいろ言われてると思いますが……。

*2:ここの数字が実際どうなるのかは分かりませんが、まさか5000人に1人より少ないということはなさそうです。

*3:過食で身体をこわす人もいれば、拒食でそうなる人もいるわけで、過食者の数だけを見て「拒食者は病気にならない」とか言うのは無茶です。

*4:私だって「ゲーム買ったり本買ったりしてる金を募金に回せば貧しい子供たちの命を年に何百人救えると思っているのだ」とか言われたら返事に窮しますし。