『月光条例(7)』

月光条例 7 (少年サンデーコミックス)

『浦島太郎』 + 『フランダースの犬』。タイとヒラメがイケメンすぎ。

「原作の気に入らないところに文句をつける」という、リスペクトもへったくれもない使い方が藤田さんらしいなと思いつつ、原作の持つテーマを度外視、というより歪曲して自説の披露に終始するのはどうなのかなあ、とひっかかるところもあります。

「自分のことは自分で評価しろ」という主張がいちばんの根本だとは思います。なので、「ただ清貧を貫いただけで、誰の役にも立たずに死んだ一生だったけど、その自分の生き方に誇りを持て」という話だと読めば、ネロの物語を批判しているというわけでもありません。でも、主人公にそれを語らせるために、ネロ(や浦島太郎)をことさら情けなく描写する……という"恣意性"が今回は特に強くて、違和感が残ります。

 それでも、訴えようとするメッセージ自体はパワフルなので、読んでてやはり面白くはあります。恐ろしく強靭なマッチョイズムは物語だからこそ成立するもので、現実で同じことやられたら勇気づけられる前に潰されて立ち直れなくなってしまうかもしれません。その意味では、恣意的な物語の中"だからこそ"できる表現とも言えます。ただ、そうやって「虚構に逃げる」ような姿勢は藤田さんにはやっぱり馴染みませんし、そこを昇華してくれたらもっと面白くなるんだろうなと思うところです。