『葉桜の季節に君を想うということ』

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

 さわやなかタイトルの印象から「セカチューみたいなお話なのかな−」という感覚で読みはじめました。まごうことなきセカチューでした。ただし不治の病の代わりにヤクザの抗争とか疑似科学商法とかが出てくるセカチューでしたが。ひ、ひー。

 主人公の男性主体的な思考が酷くて生理的に受け付けがたいところがありましたが、最後まで読むとそこも含めてうまい話であったなと。この仕掛けに引っかかってしまうこと自体、自分の中のどこかにある種の「驕り」が存在することの確かにな証拠だったと言えるでしょう。ミステリー仕掛けがメッセージと結実する、高度な在り方を具現化した作品だと想います。