見たものを見たまんま見た世界 - 安倍吉俊『リューシカ・リューシカ(1)』

リューシカ・リューシカ 1 (ガンガンコミックスONLINE)

 第一印象で「よつばと?」と思ってしまった自分を恥じ入ってジャンピング土下座かましたいくらい、独特な作品だと思うのです。どちらも「子供」を描いた作品ではありますが、「視点」の質がかなり違います。『よつばと』も、子供目線の世界を楽しみ、懐かしむ作品ではありました。でも『リューシカ・リューシカ』はもっと突っこっんだ世界を描いていて、視点のみならず脳みそまで子供のそれを経由しているような描き方がされています。

「右目と左目で見え方が違う」とか、「夜が歪んで見える」とか。「見たものを見たまんま見る」ことのできるリューシカに、とても純度の高い観察眼を感じます。頭で解釈する前の原感覚? の世界を、リューシカはそのまま見ています。これって、感じる前にまず解釈してしまう今の私たちからすると、もはやセンス・オブ・ワンダーの世界だと思うのです。そして、そんな世界を思い出しつつ再現できる安倍さんも凄い人で、ほんとこういうの一体どこから引っ張り出してるんでしょうか。昔の記憶? だとしても凄いです。

 リューシカと関係ないところだと、あにーがいいです。クリスマスの回とか、リューシカの前では生意気な兄貴面を通しつつ、最後に「僕もおなじものでいいです」と言えるのが凄くかっこいい。叱る時に叱る『よつばと』のとーちゃんとかもそうですけれど、たまに出てくる年長じゃがビっとしてると、こういうお話は締まりますねえ。