『雛見沢停留所 〜ひぐらしのなく頃に原典〜』

雛見沢停留所~ひぐらしのなく頃に原典~ (ビッグガンガンコミックス)
ひぐらしのなく頃に』の原案として名前だけは古くから知られていた幻の舞台脚本「雛見沢停留所」のコミカライズ。「ひぐらし」と共通するキャラクターは魅音梨花ちゃんのみ。その二人も梨花ちゃんが魅音より年上の「梨花さん」になっていたり、魅音が村の名家どころか単なる一村民にすぎなくなっていたりして、「ひぐらし」とはだいぶ別物です。その中で一貫しているのはやはり作品舞台である雛見沢そのものの設定で、「ひぐらし」のどの部分が最初から用意されていたアイデアであり、どこが後から考えられたものなのかがよく分かりました。

 元が舞台脚本とういことで場面は基本的に停留所から動かず、人物が入れ替わり立ち替わり現れて各シーンを構成するという案配。一冊完結ですが、30ページのお徳サイズで書き込みや文章量も多く、なかなかのボリューム感です。「ひぐらし」の大本のアイデアをシンプルになぞってはいるのですが、なまじ予備知識があるせいで逆に先の展開が読めなくなることもあり、最後まで楽しむことができました。一冊でしっかりとまとまっていますし、ひぐらしファンなら買いかな、と思います。ただ「ひぐらし」と違ってメッセージ性(悪く言えば説教臭さ)みたいなものがないため、竜騎士さんらしさは薄め。良くも悪くも普通のバイオホラーとして閉じたお話であり、そこは好き好きでしょうか。

 前述した通り「ひぐらし」キャラとの繋がりはほとんどないのですが、無関係な、あるいは立場の似通ったキャラクターのビジュアルが「ひぐらし」に似せて描かれていたりするので、なかなか面白いことになっていました。ビジュアルを見た瞬間「あ、こいつ悪いやつや」と分かる人もいれば、その裏をかいて原作とまったく異なるポジションが割り当てられている人もいます。特にメインキャラの一人である「フリーのライターの吉村さん」、この人のビジュアルがどう見ても「痩せた富竹」で大笑いしてました。しかも変態鬼畜眼鏡です。あと「ひぐらし」で当初黒幕設定だったけど後から善い人に設定変更されたあの人、彼とまるっきり同じビジュアルのキャラが本作ではほんとに「悪役」として登場するのも見どころです。ノリノリで悪い顔してますよ!