碓井ツカサ/円居挽『オーク探偵オーロック(1)』

 もうタイトルと表紙が完全に作品のコンセプトを説明してるんですが、オークがシャーロック・ホームズをやるやつです。オビでも本編中でも元ネタの探偵の名前が伏せ字になってたので「これはホームズと思わせといて何とでもひっくり返せるやつやな!」とか思ってたけど、後書きっぽいもので思いっきりホームズ言及してたのでまあホームズでしょう(後書きっぽいものを信用しないこともできるぞ)。

 19世紀ロンドンの謎にオークの筋肉で挑む、とあってバトルの比率が大きいんですけど、いわゆる脳筋キャラではなく頭の方も名探偵相応にキレるというキャラ付けなので、探偵もののお約束にメタを張ってるという感じは意外と少ないです。あと姫騎士文脈も特にないので「くっ殺」とか言う人はいません(表紙の女の子はワトソンポジションです。可愛い)。

 能力推理ものとしては、オーロックの能力が「自分の推理が正解になるよう現実の方を改竄する」っていうオーク探偵とかの与太設定が吹き飛ぶくらい強力なやつで、しかもそれをかなり安直に使ったりしてたのでびっくりしたんですが、まあ円居先生のやることなので、ここからの話の持って行き方が楽しみですね。推理との辻褄が合うところまで現実を改竄し続けるタイプの能力っぽいので、探偵自身にも影響が制御しきれず、かえって悪い結果を招きかねないとかそういう趣向はあるようです。

 謎の日本武術やチベットに縁のあるホームズが元ネタだからということなのか、かなりの頻度で東洋武術への言及とかあるんですけど、これ半分以上円居先生の趣味だったりしませんかね……? あと最後の方で新宿のアサシンみたいなのが出てきましたね?(新宿のアサシンではないと思う)