『GDZILLA 怪獣黙示録』

 シン・ゴジラでこそないものの、このアイデアをご自身で実現しちゃったような一冊。怪獣映画とフェイクドキュメンタリーという食い合わせがまず美味しすぎるので、この時点で強いです。さらに古今の怪獣特撮ネタをこれでもかと詰め込んで、こういう方向性が好きな人向けの突破力が凄まじい一冊になっています。私自身は怪獣詳しくないので、「怪獣の名前がいっぱい出てくる」「硫酸、コバルト、カドミウム」くらいしか分からないのが勿体なかったですね……。

 局所的な怪獣災害だけでも話をひとつ作れるわけですが、「1999年以降、世界中で何体もの怪獣が現れるようになり、徐々に人類が追い詰められていく」ってストーリーラインを打ち出し、人類敗北までの年譜を冒頭でドンと見せられたインパクトが凄まじかったです。序盤に出てくる怪獣でも相当手強く、甚大な被害を出しながら必死こいて撃退していく一進一退が描かれているのに、この先桁外れに強力なゴジラが出てくることがあらかじめ分かっている絶望感。どうすんのこれという感じです。

 多分話としていちばん盛り上がるのはゴジラ活性化〜核1000発によるヒマラヤ封じ込め〜浜松最終決戦における人類敗北の流れなので、ここに至る直前でこの記録が断章となってしまっているのは残念です。映画本編の内容との兼ね合いだったりするのかもしれませんが、ぜひ同じくらいのボリュームでの後編の出版にも期待したいところ。