『寝屋川アビゲイル 黒い貌のアイドル』

 下僕が「寝屋川、地元やん!」とジャケ買いしてきた小説。何も知らずに読み始めたんですが、話の大枠はミステリ構造になってるとはいえディテールはかなりストレートなオカルト小説でした。

  まず厄霊や呪詛が嘘偽りなく存在し、しかもかなりパワフルに人間を殺害してきます。これに対抗して人間側の霊能者も組織化されていて、さらに作品のオリジナル要素である「匣」「厄裁」といった概念を絡めてストーリーが展開します。ということは、ははーん黒い貌のアイドルっていう超強いアイドルの怨霊と闘う話なんだな〜って思ったんですが、これは主人公のことでしたね……(『虚構推理 鋼人七瀬』スタイルかと思って……)。

 主人公は顔に黒いシミが浮かび上がる呪い(?)を解く方法を探す元アイドル。その鍵を握るという胡散くさい霊能者コンビ、アビーとゲイルが彼女の前に現れて、なし崩しにいくつかの怪異に巻き込まれていきます。いわゆる除霊のような仕事を生業にしているアビーとゲイルですが、その手段はどうやら真っ当ではなく、「厄裁」という聞き慣れないもの。この「厄裁」の仕組みを主人公視点で追いかけていくのが主なお話となります。

 この本筋、「避けられない死!」って感じで意外とヘビーなんですが、文章で読む流暢な河内弁と軽快な会話が重苦しさを和らげてくれています。続編を作れそうな広がりを見せつつも一本の作品としてはきっちりとまとまっていて、最後まで楽しく読めました。ざっくり河内地方からの電車圏内あたりを舞台にしてるので、オビのナニワ・ホラーはどうなん? と下僕が首をひねってましたが、ふつう河内とか言われてもピンと来ないので、タイトルに寝屋川が入ってるだけでも英断だと思いますよ……。あと表紙の二人組、右側がゲイルだと思うんですけどだいぶ三枚目っぽいお顔ですね???(本文中だと超美形みたいな描写だったので……)