『プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第1章』

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 19世紀末の架空のロンドンを舞台にしたスチームパンク・スパイアクション。2017年に放送されたTVアニメの新作劇場版で、6部作予定の第1弾です。

 TVシリーズ黒星紅白さんの可愛らしいキャラクーを中心に据えつつも、国家権力の権謀術数とそれに踊らされた人間の非業の末路を描いていく直球のスパイものでした。人が容赦なく死んでいくシビアな話ではあるんですが、無闇な残酷趣味に走ることはなく、ハードボイルドな暗闘の中で少女たちの繊細な叙情性を強調していく好シリーズだったので、劇場版も楽しみにしていました。

 TV版のクライマックスで状況が大きく動いていたのでどうなるものかと思っていましたが、とりあえずは元の鞘に収まることができたようで、主人公チームによる一話完結のスパイミッションといういつもの形式が展開されました。劇場シリーズのための仕切り直しという感じのスタンダードな回でしたが、映画クオリティの上に1話あたりのボリュームも増していて、流石に見応えがあります。

 話の要点は完全にチェスで、「内心を隠した者同士がチェスの対局を通した心理戦で相手の手の内を探り合うやつがやりたい!」というスタッフの気持ちがよく伝わってきました。物語の転機となる対局シーンを格好良く見せるために構成されたシナリオという感じで、上手く決まっていたと思います。こういうのは指し手の 2人の心理戦となるのが定番ですが、観戦に来たノルマンディー公がめちゃくちゃ圧をかけてきて三つ巴みたいな構図になるのが面白かったですね(結局公の一人勝ちみたいになっててひどかった)。

 6部作としてはいくつかの伏線が撒かれるにとどまったので、話が大きく動くのは次回の第2章になりそうです。共和国のコントロール、王国のノルマンディー公に次ぐ第三勢力を絡めつつプリンセスの王位継承を巡ってあれこれやっていく話になりそうで楽しみなんですけど、心配なのはこれ本当に完結できるのかな……というところ。2019年の公開予定が伸び伸びになり、ようやく封切りとなったもののこの時節では人の入りは心許なさそう。良いアニメなので、どうにか最後まで見届けたいのですが……。