『ゲット・アウト』

ゲット・アウト(字幕版)

ゲット・アウト(字幕版)

  • 発売日: 2018/01/19
  • メディア: Prime Video

 ジャケット絵見て「椅子に括りつけられた状況で2時間がんばるソリッドシチュエーションホラーかな?」と思ってたけど、別にそういうのではありませんでしたね……(冒頭で背後から襲われて気絶させられるシーンあったので、そのまま目が覚めたら監禁されてるパターンなのかと思った)。

 ホラーはホラーでも、極めてストレートな黒人差別を扱ったサスペホラーでした。昔ながらのプリミティブな黒人蔑視より数歩踏み込み、公平に接しているつもりで開口一番「黒人ならではの」みたいな礼讃をしてくる現代的な差別の在り方に焦点を当てていて、非常に居心地の悪い息苦しさがあります。周囲から孤立した一軒家とそこに集うコミュニティが舞台、というあたりから「田舎の因習」系ホラーの変形みたいな文脈を感じながら見てましたが、コミュニティの構成員が公的にも社会的地位の高い人間ばかりだったりして、雰囲気は独特ですね。

 終始漂い続ける不穏な気配が徐々に蓄積していき、もう限界というところで遂に現実的な「危害」へと姿を変える爆発力は見事。そこからのホラーパートはどこかシュールな映像が続いていく感じで奇妙なんですけど、最後の最後にまた流れが変わって、カタストロフ半分カタルシス半分みたいなクライマックスに突入するのが面白かったです。被害者と加害者、という話の土台が一瞬ムチャクチャになって、次に何が起こるか全く分からない状況になるんですよね……。

 最終的に後味は悪くないところに落ち着いて、ある意味元気の出るところもあったんですが、最後に助けてくれたのは結局彼だったわけで、横たわる断絶について安易な希望を一切示していないのが痛烈でもあります。後から振り返って重くのしかかるタイプの映画でした。