昨年に引き続き、すごく良い年始イベントでした。メギドの面白いイベントにも色々あって、個々の要素が一定以上の質をしっかり保って安定した面白さが提供されている場合もあれば、何か異様な要素が一転突破で突き抜けてくる場合もあるんですが、今回はシナリオ、メインキャラクターの造詣、サブキャラクターの使い方、音楽や歌詞といった各要素がしっかり嚙み合うように統一感を持って作りこまれていました。
シナリオ本編のロキとマネージャの話がまず良かったんですが、ロキの個人シナリオでもそこがさらに深堀りされているし、単純にライバルというポジションに収まらないプロメテウスとの関係も良い。ロキの歌とプロメテウスの歌も良い感じの相補関係になっていて、本編を読んだ後それぞれの歌詞を交互に聴き込むのがすごく楽しい。メギドのメインシナリオは毎回すごく作りこまれていますが、今回のように本編シナリオ、個人シナリオ、音楽の歌詞といった要素が総合的に効いてくるのはイベントならではの面白さですね……。
端役のところでは、一歩引きながらもしっかり個人の物語と葛藤を見せてくれたフルーレティの「創作と現実への向き合い方」もすごく良かったです。「創作を通じて現実を変えたい、次こそは変えて見せる」という意思を表明していく一方で、「薄っぺらい創作で過去の事実を覆い隠すのは一種の冒涜」という自省が前提としてちゃんとあり、それでも「創作は未来に対する祈りとしてある」という風に話を持っていく。この辺はプロメテウスの『この歌響け』と完全に対応していて、「音楽は都合よく世界を変える魔法なんかじゃない」「"祈り"が後押ししてくれる」のくだりはまんまそういう話をしているんですよね。
今回のフルーレティ関連は、メギド72というゲームが創作と現実の相互性に対してどういう態度で向き合っているかを一側面ながら象徴するエピソードだったと思います。ライターや運営の本心なんて知りようがないにしても「作家」であるフルーレティの示す創作倫理を作品自体に何も還元しないのはかえって無理筋ですし、過去のプロデューサーレターで表明されてきた「娯楽作品でありながらも現実との相互作用をないものとしない」スタンスにもそぐう話だと思います。「メギドの思いの片鱗、たしかに受け取ったぜ……!」という気持ち。私はフルーレティ召喚できませんでしたが、いつか引いてちゃんとキャラスト読みたいです……。