『GOSICK』桜庭一樹

GOSICK―ゴシック (富士見ミステリー文庫)
ドリルー。
推定少女』『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』と比べると、やっぱり作風はかなり違います。『GOSICK』の雰囲気のある一要素を切り取って広げたのが『推定少女』で、それをさらに数倍濃ゆめると『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』になる感じです。名前を伏せられたら同じ著者と見抜くのは難しそうです。
桜庭さんは『推定少女』や『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』から入ったので、これが初GOSICKです。ああ、これが噂のヴィクトリカさんですね。ヒロインをあえて「しわがれた老婆のような声」にしてしまうのは、なかなか勇気のあることだと思います。これはヒロインに鼻血を吹かせたり嘔吐させたりする試みに近く、上手くはまれば反則のように読者の心を掴みますが、はずすとただの色物ヒロインで終わってしまう諸刃の剣です。男の人がただただ「かわいいヒロイン」を意図して想像してもこんな発想は出てくるものじゃないので、そのへんは女性作家の強みかもしれませんね。未成年でパイプをくゆらせるのも、そこらへんのおじさんとか中高生だと許せませんが、ヴィクトリカさんだとかわいく思えてしまいます。この違いは何なのでしょう?
えっと、とにかくそんな感じで、ヴィクトリカさん(それか作品自体の雰囲気)を好きになれるかどうかがこのシリーズを買い続けるかどうかのひとつの分かれ目になりそうです。ミステリーとしても順当な作品だと思いますけど、ミステリー読みの方は順当以上のものでないと満足できないことが多いようなので、双子が出てきても入れ替わりトリックを疑おうともしないほどミステリー値の低い私には何とも言えません。
ところで『サガフロンティアII』のグスタフの髪型を前後逆さまにしたらドリル警部っぽくなると思いました。思いました。はい。やっぱり砂糖水で固めているのでしょうか……。あ、それとあとがきが気合入り過ぎです。