2009-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『円環少女(6) 太陽のくだけるとき』

1 400ページ読むのに8時間かかったライトノベル。*1 初期は読みにくい読みにくい言われてた文体もかなり改善されて、「悪文ゆえに読解が阻害される」ということはほとんどなくなりました。文章密度も、ちょっと濃ゆめではありますがライトノベルの常識範囲。…

『クレィドゥ・ザ・スカイ』

これまでの巻にも増して、茫洋とした感覚に包まれた一冊。主人公は自分が誰だか分かっていないし、現実の中に幻を目撃するし、なによりまともな記憶を持っていません。そして、繊細な筆致と意図された情報制御によって、読者もまた主人公に近い意識状態にシ…

史上最低の東方クソゲー二次創作 - 『さなえチャンは囚われてしまった!』

作者本人に「オラッさなトラの感想書けよっドンドンドン」って自宅に押し掛けられてなんか怖いので感想書きます。この記事タイトルを指定したのも作者本人です。いい釣りタイトルですね。ひどい。 http://www.geocities.jp/erguhh/sanatora/ なんだこりゃク…

『来訪者』

裏表紙紹介によると、優雅で刺激的な艶笑譚とやら……つまり下ネタ短編集。 刺激的というのはともかく、優雅かというとこれはかなり疑問で、表題作の主人公であるオズワルド氏なんかはたいへん独善的で差別的な御仁です。エジプト王族の愛人を寝取り、追ってに…

偏在する"私"の視点 - 『この世界の片隅に(下)』

非常に長い長い作品を読んだという印象があったので、一冊あたりがほんの150ページ程度で構成されていることに後から気づいて凄く驚きました。読んでる間の没入感が本当に凄くて、読み始める前と読み終わった後の自分の時間が不連続に感じられたほど。"漫画…

『この世界の片隅に(中)』

かぎりなく尊い日々を描いているというただその一点だけにおいても、本作にはひとつの作品としての価値があるのだと思います。けれどその日々には、もうひとつの不可分な要素が常に影を潜めています。それをどう受けとめればいいのか、中巻を読み終えた今で…

『この世界の片隅に(上)』

なんとのんびりした日常。特に意識したわけでもないのですが、気がついたら一冊で一時間というとてもゆっくりしたペースで読んでいました。 一冊の漫画をこんなに時間をかけて読むのは『DEATH NOTE』以来。なのですが、情報過多で内容を理解するために時間を…

夢の大切さと大人の汚さを同時に教えてくれる本『古代への情熱 -シュリーマン自伝-』

幼少の頃に親しんだホメロスの詩を信じてトロイア遺跡の発掘を夢見、大志を実現するため下働きから大出世して巨万の富を得、遂には"「ホメロスの詩はフィクション」という当時の常識"を覆してトロイア遺跡の発掘に成功した大偉人……ということになっている人…

そこに千差万別の物語構造を見いだしたい - 大塚英志『ストーリーメーカー』

「物語感覚」は普遍的ではないのかもしれない まだ誰も指摘してないので自分で言っちゃうと、この記事のいちばんの突っ込みどころは、まるで自分に「物語感覚」があるような顔でぬけぬけと偉そうなこと書いてるところですよねーみたいな。一作でいいからちゃ…

本日一信

「週刊メルマガクリルタイ」でゲームの話を書かせていただきました。小説や映画では難しいゲーム独特の表現演出、というテーマで、『SaGa』シリーズを題材に3000字ほど。よかったらお読みくださいませませ。 2009/10/06 週刊メルマガクリルタイ Vol.13

「物語感覚」は普遍的ではないのかもしれない

5分で物語を作れるにようになるコツ リンク先の話題は非常に初歩的な話ですが、物語を実作するにあたってこういうところから入っていく姿勢は、大塚英志さんの物語論っぽいなと思いました。 大塚英志さんのやってる「物語論」のことは、ずっと不思議に思っ…