メギド72 9章3節 感想

 今回は印象深いセリフに加えて設定的に突っ込んだ話も多々あり、スクリーンショット数えたら450枚近くになってしまいました。メギドのメインシナリオって面白すぎて逆に感想書きそびれるところあったんですが、何も残さないのはやっぱり勿体ないので今更ながらメモだけでも残しとこうと思います。

 戦いとしてはまるまる砲撃作戦の攻略でしたが、最大の見どころはやはり中盤で挟まれる大罪同盟の過去回想だったと思います。8章ラストでソロモンが想った「かつて、あの人たちに何があったんだろう」という独白。ずっと温められて(そして練り込まれて)きたであろう同盟の内実が遂に明かされたのだけでも感慨深いんですが、自分の預かり知らぬところで形作られた関係性を後から知っていく過程がすごく面白くて、「お前ら、お前らほんま……」って身悶えに近い気持ちになりましたね。

 同盟は当然一枚岩の集団ではなかったんですが、もっとドライな関係かと思ったら想像以上に紐帯が強くて、あのアスモデウスさえ明確な仲間意識を抱いていたことが言葉の端々から伝わってきます。結局は敵の方が一枚上手だったので同盟は内側から崩壊したわけですが、その後も同盟が残した流れを絶やさぬために各々が各々のやり方で手を尽くしていたし、半ば敵の傀儡と化してしまった8魔星さえ「同盟に代わるもの」を目指してはいたんですよね……。

 同盟が崩壊していく一部始終を最も俯瞰的に眺めていたのが他ならぬルシファーで、ことの顛末が彼女のモノローグとして語られたのがまた哀切を抱かされるところでした。ルシファー、意思のない姿しか見てなかったから何を考えてるのか全然わからなかったけど、こんなにストレートに同盟のことを思っていたなんて……。9章4節が俄然楽しみになってきました(9章4節でルシファーが仲間になると思い込んでいる人)(だって皆が期待してるこのタイミングでガギゾンが仲間になるのはあんまりにもあんまりだし……)。

この令和の時代にうみねこの丁寧な新作が読めて本当に嬉しい - ひぐらし命うみねこコラボ「魔女の血ぬられた生誕祭」

ひぐらしのなく頃に命』(昨年から始まったひぐらしソーシャルゲーム)と『うみねこのなく頃に』、初のコラボイベント。ひぐらし命のシナリオは基本的に叶希一さんという過去CS版などで関わってたライターさんが担当しているんですが、今回は特別に原作者の竜騎士07さんその人が執筆すると発表され、ファンの間では結構な話題になりました。

 通例、ひぐらし命のイベントシナリオは十数分で読めてしまう短めの小話なんですが、今回は原作者権限で無理がきいたのか10万字という桁違いのボリュームがアナウンスされています。BGMも原作曲がそのまま10曲以上採用されているし、ここでしか使えないだろう新規書下ろしの背景イラストも多数*1、今までアプリ中で聞いたことのないSEも多数追加されてたりして、いろいろと破格の扱いです。正直、ひぐらし命のフォーマットでどこまでやれるんだろう……という心配もあったのですが、いざやってみたらOPで原作曲が流れた時点で脳みそが完全に「うみねこ」のモードになってしまいました。この令和にうみねこの完全新作が遊べるなんて……。

 初のコラボシナリオということでひぐらしうみねこ双方のメインキャラが勢揃いしてお祭りっぽくワチャワチャやるのかと思ったら意外とそんなこともなくて、しっかりキャラとテーマを絞った上で非常にまとまりのあるお話が展開されました。キャラクターのチョイスもなかなか見事で、主要キャラとしておおよそ以下の6名が選ばれています。

 うみねこ主人公の右代宮戦人すら出てこなかったのは驚きですが、「あのキャラに出て欲しかったのに」という不満の声はどうせ絶対上がるし、立ち絵1枚書くのにも予算はいるので、なんとなくメインキャラ総登場で散漫な話になるより良い内容になったんじゃないでしょうか。うみねこの「顔」であるベアトリーチェを登場させてシリーズ鉄板の推理ゲーム展開へと導きつつ、異様にアクの強い名脇役ポジションである古戸ヱリカをライバル的に配置してお話を引っ張っていく。間口の広いところも深いところもカバーして、うみねこ未読者をいい感じに作品の深部まで導いてくれる粋な陣取りだと思います。

 ひぐらし組も、ゲームオリジナルキャラの菜央ちゃんをシリーズお馴染みの園崎姉妹が賑やかにサポートしていく構成になっていて、「このシナリオを読むために初めてアプリをDLしました!」(かなり多い)という人が未知のオリキャラで誰コレとならない配慮を感じました。うみねこ未読、ひぐらし未読、さらにはひぐらしファンだけどゲームは未プレイという人まで含め、様々なプレイヤー層がいずれもお話に入っていきやすい絶妙なチョイスです。

 話の導入は分かりやすくてスピーディー。あくまでゲストとして執筆していることを弁えているのか、竜騎士さんの手癖である過度な露悪描写や説教じみた長話も今回は封印されていて、相変わらずクセはありつつも後味が悪いような話にはなっていません。本編のようにドカドカ人が死んでいく展開ではないのでライトはライトなのですが、単純に表層的な話に留まるわけでもなく、サブキャラがいい仕事してることもあって要所ではスッと深いところに切り込んでいく。ああ〜うみねこ読んでる〜という気分になります。

 竜騎士さんのテキストって結構冗長というか、勢い任せで話が前後したり表現が重複したりということが多いんですが*2、執筆期間やボリュームに制限があったからなのかゲームアプリとしてのチェック体制がしっかりしてるからなのか、今回はその辺も極めてシュッとしていました。正直、竜騎士さんのテキストとしては過去に例がないくらいまとまりの良いシナリオだったと思います……(もともとは叶さんが執筆を予定していたはずなので、その辺の名残もあるのかもしれませんね)。

具体的な内容の感想(ネタやオチに触れます)

 ここから具体的な内容の感想も書いていきたいんですが、生き生きしている最新の古戸ヱリカが見られて本当に良かった! 過去の私の日記や発言を掘り返すと色々出てくるんですが、私はこの古戸ヱリカというキャラが好きというか、執着が強すぎて憎しみすらあり、むしろ嫌い、この古戸ヱリカというキャラ最悪だなと事あるごとに思っており、ともかくその古戸ヱリカが今回は主要キャラ級の活躍をします。主人公はひぐらしサイドの菜央ちゃんですが、彼女の視点を通して古戸ヱリカという探偵の人となりに触れていくシナリオといって過言ではありません。

 うみねこ本編中の古戸ヱリカは物語の要請によって悪役として悪役の振る舞いをするザ・悪役、最悪中の最悪なクソ探偵だったのですが、今回のコラボシナリオでの彼女はそういう役割から解放され、主人のお使いを理由に半分行楽気分で六軒島にやってきた通りすがりの変人探偵という立ち位置になっています。物語の要請と主命による「悪役」の制約から解き放たれた古戸ヱリカがどうなったかというと、主命の代わりに個人的な趣味で悪役を気取る異様に性格の悪いクソ探偵になっていて、やっぱりずっと感じが悪いしひたすら悪役ムーブを楽しんでるところも変わらないんですが、なんか肩の力が抜けてるところもあり、ああ……やっぱりヱリカって素でも根っからの性悪クソ女だったんだな……子供の足とか平気で引っかけるし小学生にガンガン圧かけてくるし……と心がほの温かくなりました。この気持ち、あと10年くらい大事にしたいです……(ガチャ実装されるみたいだけどどうするの? 天井とかやったことないんですけど?)。

 名探偵ワニャンに心酔する古戸ヱリカ、というのは割と新解釈で、自分と主人以外の全ての存在を見下す孤高の古戸ヱリカ像とは相反するし、やや話の都合でそうなった面も感じるのですが、流行りのアニメにかなり気持ちの悪い入れ込み方をするミーハーな古戸ヱリカ、アリでは? と私の中で承認されました。別に見下しながらヨダレたらしても良いわけですし、人の心、古戸ヱリカの心は海より深くはかり知れない。いいと思います。名探偵ワニャンのオタクトークを延々繰り広げる古戸ヱリカ、気持ち悪くてすごく良かったです。

 ヱリカがひたすら良かったのでそれだけで100億点なのですが、コラボとしてもしっかり楽しくて、園崎姉妹とヱリカの「息の合った」とすら言える当意即妙の絡みが見られたのは眼福でした。園崎姉妹はいろいろ確執もある双子ですが、その2人が旅行先で心底楽しそうにキャッキャ騒いでる様を竜騎士さんの筆で見られるのは気持ちがいいし、重みもある。はしゃぎ回りつつもしっかり状況を俯瞰して役割をこなす魅音さん、はしゃぐ姉の抑えに回りつつ自分もしっかりはしゃぐ詩音さん、このはしゃぎのタガの外し方は原作者ならではと言ったところで、人様のキャラだとこういう崩し方はなかなかできんわな……と思います。園崎姉妹が古戸ヱリカの変態性に負けず劣らずの張り合いを見せてくれるクライマックスの姿は圧巻で、ヱリカのヤバさと部活メンバーのヤバさがこんな風にリンクするなんて……と10年越しのわかりを得ました。わかる……。来年は絶対ヱリカの方から雛見沢に来て村をメチャクチャにしてください。

 ミステリ部分はシンプルでしたが、うみねこの特殊ルールである「赤字と青字の推理ゲーム」のいいプレゼンになっていたし、仕掛けもかなり良かったのではと思います。叙述トリック……では決してないんですけど、見えてるのに前提が覆ると見え方が変わる、というミステリの定番を非常に竜騎士さん「らしい」味わいでまとめてくれていました。なかば部活のノリへと昇華されていく解決編もめちゃくちゃ面白くて、「ひぐらし」「うみねこ」のコラボとして完璧なオチになっていたと思います。これが原作者の出したコラボの答え……。

 シナリオ中、続編コラボを匂わせるようなコメントが度々あったので、これにはかなり期待しています。今回のコラボではひぐらし命の開発体制の中で竜騎士さんのシナリオが実装されるという形式がかなりいい方向に働いたと思うので、うみねこコラボだけと言わずちょくちょく竜騎士さんのシナリオが読めると嬉しいですね……。

 ただしひぐらし命のメインライターは叶希一さんですし、ゲーム本編のシナリオも「竜騎士さんとは異なるライターが書く外伝ひぐらし」としてしっかり手が掛けられた作品になっています。今回は竜騎士さんの参加が急遽決まった雰囲気があるので、叶さんにとって気の毒な状況になってやしないかちょっと心配なのですが、今後は竜騎士さんと叶さんが上手いこと分担して作品を作っていってもらえれば一ファンとしては理想だな……と思います。いい感じの展開になるよう、どうにかサービス存続してほしいですね……。

*1:CS版から流用してるみたいです……

*2:最近だと『幻想牢獄のカレイドスコープ』がかなり……でした。

暁佳奈『ヴァイオレット・エヴァーガーデン(上)』- アニメでカットされた暴パートにびっくり

 アニメを観て、原作の方はどんなものかな〜と気になったので既刊を揃えました。特に興味があったのは以下のポイント。

  • ヴァイオレットが「感情」をまず知識として学習し、実感のないまま代筆という形で模倣し、最後に自分の体験としていく過程の妙は、原作の描写からおこされたものなのか、アニメ特有の描き方なのか
  • 控えめに言ってエグ味のある基本設定*1をアニメはあまり前に出さずに卒なく処理してた感じだけど、そもそも原作はどういうタッチだったのか

 前者に関しては、この上巻の時点では該当するエピソードがないので判断保留。アニメ版はかなりヴァイオレット寄りの視点で、代筆者としての変化の過程が時系列*2で描かれていましたが、原作は基本的にクライアント視点の物語になっていて、ヴァイオレットというミステリアスな主人公の人となりをまずは外側から探っていくような構成になっていたんですね。自動手記人形(オート・メモリーズ・ドール)という職業名もまずはここにかかっていて、精巧な人形のように美しい少女というというところが繰り返し強調して描かれます。

 話が進むとヴァイオレットの兵士としての過去が語られますが、こちらもかなり印象……というか見せ方の方向性が違いました。アニメは銃や単純な格闘術など比較的地味な戦闘しかなかったと思いますが*3、原作のヴァイオレット、なんと身長くらいある特注バトルアックスぶんぶん振り回して一人で数十人の兵を殺して回ったりしてて、あっそういうノリのやつだったんだ……てなりました。架空の19世紀くらいの時代感に見えるのに特に説明もなく近未来並みのハイテク義手が出てきたりして、なんか不思議な背景設定だな〜と思ってたんですが、それもこういうノリの名残だったんですね……(そもそもこの義手も戦闘用らしいですし)。

 原作小説ではヴァイオレットの戦闘、というか殺戮のシーンにかなりしっかり尺が取られています。返り血に塗れながら敵を殺戮するヴァイオレットの姿は凄惨であると同時に活劇的な見どころとしても描写されていて、抑制的だったアニメ版とは微妙にニュアンスが違いました。作者さんも「戦闘シーン書いてる時がいちばん楽しい」ということを言っているので、大元はけっこうストレートに「戦闘美少女」的な趣向のある作品だったようです。お兄ちゃんがヴァイオレットを拾った経緯も「無人島に漂着したら殺人野生児に同僚を皆殺しにされたうえに自分だけなぜか懐かれてどこまでも着いてくる(たすけてくれ)」みたいな異様に与太度の高いエピソードになってて何コレ? こういうの講談の豪傑とかをキャラ付けする時とかに生えてくるやつでは? ヴァ、ヴァイオレンス・エヴァーガーデン……。

 読んでた時は「ヴァイオレットをモノ扱いするなんて酷い!」みたいな憤りがなくもなかったんですが、改めて振り返ってたら「まあそもそもそういう作品だし……」という気持ちになってきました。アニメはこういうところをかなり細かくオミットして作品を綺麗な方向に統一していたので、英断だなあと思いつつ、もしかしたら複雑な思いをした原作ファンもいたのかもしれません。分銅つきバトルアックス振り回してベヨネッタみたいな動きするヴァイオレット……もう完全に別物ですけど、まあこれはこれでアニメ映えしたとは思います。

 ヴァイオレット以外のキャラクターもアニメではかなりマイルドに調整されてたみたいで、原作では印象がけっこう違います。陰気で誤解されやすい朴念仁といった風だったお兄ちゃんですが、原作だとならず者が軍服着てるタイプの完全なろくでなしでびっくりしました。チャラいゴロツキですよこれ……。無害な良識人の感のあったホッジンズ社長もストレートな女たらしだし、ヴァイオレットの殺人ショーを賭けの対象にしてたりしてて大概です。少佐その人はわりと印象通りでしたが、幼いヴァイオレットに惹かれつつ殺人道具扱いをやめられない心情が彼視点で詳らかに語られるので、やはりどうしようもない大人感はありますね。下巻で挽回できるんでしょうか……。

*1:「感情のない児童兵」というある種の典型的な経歴とか、それに恋する上官とか、そういう文脈があった上で主人公に冠される「人形」「ドール」といった職業名とか。

*2:兵士時代の過去編を除いて

*3:まあめっちゃ強いは強いんですが。

『星間都市山脈オリュンポス 』神を撃ち落とす日』

 1週間ちょいで駆け抜けました。相変わらず異聞帯を滅ぼすことに対する葛藤がノルマっぽくて、定命やら停滞やらを云々する大テーマにも乗れないのですが*1、出てくるキャラクターにはそういう大筋と関係ないところで好感が持てたし、話運びがやっぱり単純に面白い。機神もこれどうやって説得力ある勝ち方するの? と訝しむくらい桁違いの強さがアピールされてて、そこからちゃんと納得の勝利の形に持っていけてたと思うので、こういうところは流石だなと思います。

 アトランティス以降は予算をかけた演出力でぶん殴ってくるところも増えてきた感がありますが、今のところ場面にちゃんとハマってるのでいいんじゃないかなと思います。話が派手になっていくにつれ、一枚絵やアニメーションなしだと難しそうだな、というシーンも増えてきましたしね。巨大ロボとか……。

 クライマックスが盛り上がった結果、中盤ものすごく頑張って仕込んだ大召喚の果たした役割が相対的に小さくなってしまった感はあり、全サーヴァントが役割を使い切ったアトランティスの方が構成自体は綺麗だったかもしれません。ただ個人的にはアレス召喚の流れがすごく好きで、あらかじめ金時ロボを出しておいて何となく脳に"ああいうの"のパスを通しておくことで、理屈は置いといてあの場面で機神クラスの最強ロボを召喚してしまう"流れ"に雰囲気的な導線を引いてしまった。「ここまで導線引いとけばこのくらい無茶してもええやろ」って発想の話運び、好きです……。

 みんな言ってると思いますが、キャラクターはキリシュタリア周りに意外性があってすごく良かったです。登場時からあ〜こいつは噛ませですわ〜みたいに言ってたのが本当に申し訳ない……。同様の見方してた皆様の態度がオリュンポスでコロッと変わるのを見て何かあるんだろうなとは思っていましたが、分かってはいても実際良かったです。カイニスともども大好きになってしまいましたね……。今年の水着イベントで「カイニスと新所長の関係なに?!」って笑ってましたけど、納得。

 脇役だとペペロンチーノの動きが良かったです。人が良いのでもともと大好きですが、キリシュタリアにペペロンチーノさん呼びされてるの見て双方の好感度がまた上がってしまいましたよ。あとリンボの再生を打ち止めにしたのが第三勢力のムーブとしてかなり良いファインプレーでしたね。単に「倒す」のではなく「不死身の敵の残機を1にする」という落とし所も上手くて、見事な話運びだと思いました。

 シロウ村正が異界の神の使徒側に回ってたのはけっこうショックで、私も知らん間に愛着湧いてたんだなーと自分でちょっと驚きました。言峰綺礼と意外と上手くやってたのは面白かったので、引き続きイチャついていけばいいと思います。異界の神については……これまでネタバレ踏まずにネットやって来れたのには感謝しかありませんが、それにしても何だったんですかねアレ……。「状況や画面演出に対して何かが乖離している」っていうのは分かるし、ギャグの手法としてはよく見るやつなんですが、今回はよりによってここで、という場面だったので、えも言えん妙味がありました。良かったと思います。

*1:そういう意味ではそもそもTypeMoonのテーマに乗れたことない。

『神代巨神海洋アトランティス 神を撃ち落とす日』

 前半いいとこで1年くらい中断してましたが、11月イベントの参加条件が5.5章クリアと聞いて重い腰を上げました。やってみるとやっぱり面白い。速攻クリアするほどの体力はないにしても、長いこと積んでしまってたのは勿体なかったですね……。

 今回の面子は最初あんまりピンと来なかったんですが、一緒に冒険してるうちにしっかり愛着が湧いて来て楽しかったです。一人でも欠けたらラストまで辿り着けなかった、という話運び自体は割と定番ではあるんですけど、今回はそれが特に徹底していて、クリア後のお別れタイムもイアソンだけ。イアソンはこのお別れを言うために残ったようなものなので、やり切った構成という感じがしました。あと下総でアレだった望月さんの素の姿がようやく拝めて嬉しかったです。あんなノリなんだ……。

 終盤はえらいリッチなアニメーション演出をバンバン使っていて、これに関しては予算の力〜という感じ。こういうのは力の入れ方を間違えるとよろしくないことになるので、今後も上手くやってくれ〜と思います。

麻耶雄嵩『友達以上探偵未満』

 本人がやりたかったのか周りに乗せられたのか、経緯はよく分からないけど「若めの読者層向けのライトな百合ミステリを書くぞ」という明確な意思が伝わってくる麻耶雄嵩さんの百合ミステリ。謎解き要素の強い推理短編が3つ、人間がさくっと死んでは、探偵志望の高校生コンビに推理の具を提供していきます。

 キャラクターものとしても極力軽くしてある感じで、探偵の女子2人もメルカトル鮎やら木更津悠也やらのアクの強さはありません。どこかでえげつない仕掛けを突っ込んでくるかと身構えてましたけど、そんな悪趣味な不意打ちもなく、最後までしっかり雰囲気が守られていました。麻耶さんってこういうのも書けるんですね……。

 普段とはがらりと違う作風ですけど、探偵が根本的に自分の欲望に忠実だったり、犠牲者や犯人に対して妙に淡白だったりするあたりは確かに麻耶さんの小説だなと思います。ロジック担当のあおがクールで淡々としてるのは分かりますけど、賑やか担当で人懐こいももも根本的なところで薄情だし、人の人生を左右する探偵行為への屈託とかまるでなさそう(そもそも冤罪を恐れてないし……)。麻耶さんの入門書として薦めるにはクセがなくて作家性を掴みにくいですけど、淡白な麻耶さんが読みたい時は丁度いいかなと思います。

 

『輪るピングドラム』

 10年遅れですが視聴しました。放送当時は象徴性の強い映像に対する解釈議論でネットが喧々轟々だった印象があって身構えてましたけど、通しで見ると伝えんとしてるところはかなりストレートでしたね。

 一度頭の中で設定を咀嚼して「こういうことかな?」と推測を立てながら見ていかないと話の構図を追うのが難しかったウテナと比べ、本作は設定的なところが理解できなくても本筋として伝えたいであろうところはだいたい伝わる映像になっていて、すごく呑み込みやすかったです。どう斜に見てもある種の社会的苦難を負う層に向けたメッセージ性を持つ作品なので、伝わる人にだけ伝わるような作りにしていないのは道理だと思います*1

 特に最終回の構成は、これ自体が1つの映像作品として問いと答えをセットで提示しているので見通しが良かったです。選ばれた子供と選ばれなかった子供が分かたれていて、テロリズム的な手段に訴える者がいて、という状況を見せた上で、クライマックスで「運命の果実を一緒に食べよう」という言葉を示す。とても浅いレベルではありますが、作品理解の第一歩として「なるほどこれはこういう話だったんだな」という確信がまずは得られたし、どこまで掘り下げても結果的にはこの一言に戻ってくるんだろうなという気がしています。

 話の核心がスッと伝わることと、どこまで掘り下げて読み込める作りになっているかはぜんぜん別の話なので、そういう意味では分かりやすいどころかとことん底なし沼な作品だと思います。一回観ただけだとなんも理解できてないな、というのが正直な気持ち。後ろで終始ペチペチやってるペンギンとか画面に映り込むあれこれが意味のカタマリだと思うんですが、なんか賑やかで楽しい映像だな、くらいのことしか受け取れてない。引用された実在のテロ事件を同時代的なざっくりしたシンボルとして見るべきなのか、もっと具体的な固有の出来事として掘り下げて見るべきなのかもよく分かっていません。こういうところはもう本作に10年付き合ってる先輩方に教えを乞うしかないですね。とはいえ、作品を読み込むことで最初に提示された核心が掘り下げられこそすれ、裏切られることはない作品だと理解しているので、そこは素直に観ていいのだろうなと思っています。

*1:この方向をもっと突き詰めてシェイプアップしたのが『さらざんまい』なんだろうなという印象もありますね。