『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』西尾維新

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)
……なにあのオビ。
まわり中がみんなネコソギラジカルネコソギネコソギ言ってて悔しいので、ひとまずクビキリから入ってみました。何かもうかなり出遅れ感。毎度のことですけど、もっと早く読んでおくのだったとストレートに思います。文庫じゃないからと読むのを渋ってきたのは勿体なさすぎました。
ライトノベルっぽいという前評判は以前から聞いてましたけど、予想していたものとはちょっと違いましたね。たしかに「天才」とか「万能」みたいなキーワードから入るキャラクター設定はJDCシリーズを彷彿とさせますけど、西尾さんはそこで止まらずに「天才」ならちゃんと「天才」っぽく描写しています。このあたりは「あえて書かない」清涼院さんのやり方とは決定的に違いますね。ヒロインさんが「うにー」と言い出したりメイドさんがやたら多かったりするのも表面的な意味でライトノベル的ですけど、その辺は読書に不自由な人が拒否反応を示す程度の趣味の問題で、あまり大したことではないと思います。(マーケティングとか萌えとか言い出すと重要な問題になるのかもしれませんけど、私はそういうのよく分かりません) いわゆる「戯言」と呼ばれる主人公の語り口にはすんなりと入っていけました。なるほど凝ってますね。西尾さんがどれだけ言葉を大事にしているかがよく分かります。
そえれよりもこれはアレですね。アレ。うまく言葉が出てきませんけど、主人公の一人称がときどき漏らす「苦悩のようなもの」(たぶん本当は苦悩ですらないアレ)の辛くて冥くて業深いこと。この主人公は一見ただのネガティブな無気力無関心ですけど、本性はきっともっと重症で悪質です。このキャラクター、同年代の同じようなことを考えた経験のある人には相当「来る」でしょうね……。