『ゼノサーガエピソードII 善悪の彼岸(上)』愛沢匡

ゼノサーガ エピソード2 善悪の彼岸〈上〉 (ファミ通文庫)
ふむー。
ゼノサーガですよゼノサーガ。しかもエピソードII。普段ノベライズは滅多に読まないんですけど、本作はWeb上に感想がほとんど見つからなくて不憫だったので、今回はちょっと自分で人柱になってみました。(ゲームのノベライズなんてどれでもそんなものなのかもしれませんけど)
ひっとばしらひとばしら。
オビの言葉が「SFRPGの大傑作!! 壮大な宇宙叙事詩!!」だったり、巻末にそれなりに詳しい用語集が載っていたり、あとがきがあとがきじゃなくて「巻末エッセー」と題されたいたり、ヒロインのシオンさんが前作で付けっぱなしだった眼鏡をあっさり外してしまったりと、ゲーム製作陣の色々な意味での必死さが微妙な角度で伝わってきます。まあなにせ善悪の彼岸ですし。
内容の方はといえば、原作に非常に忠実です。どのくらい忠実かというと、オープニングの戦闘シーンの会話がゲーム中でのものと覚えている限り(あくまで覚えている限り)一言一句違わない、というくらいには忠実です。可能な限り原作ゲーム通りのお話にしようという愛沢さんの意図が分かりますけど、そのぶん小説として読んでいるとちょっと窮屈に感じました。それでもときどき、不意に愛沢さん自身の言葉で登場人物の意図などが表現される瞬間があって、これはなかなか面白かったですね。でもそんなぎこちなさも最初のうちで、半分を過ぎたころには愛沢さんもだいぶ慣れてきたようです。原作をトレースするのもほどほどに、序盤の窮屈さも消えてうまく小説として消化されたものになってきて良い感じでした。
キャラクターがほとんど説明なしに登場するので、さすがに原作を知らない人が読むのは難しいです。でも原作をプレイ済みの人になら、人物側の心理を補足する意味でそれなりの読み物になっていると思います。一作目だけプレイして二作目はやっていないという人が、ストーリーだけは知りたいから読んでみるというのもありでしょうね。あと、イラストは田中久仁彦さんでこそないもののエピソード1に近いお顔に戻っているので、三次元に適応できなくてエピソード2のプレイを放棄してしまった人も安心してお求めできるでしょう。よかったですね。