『GOSICK III -青い薔薇の下で-』桜庭一樹

GOSICK〈3〉ゴシック・青い薔薇の下で (富士見ミステリー文庫)
ドリルー。
さて、今回ついにドリル警部のドリルの謎が明かされます。出番も心なしか多めです。ドリルマニアには必読ですね間違えましたもういいです。ええととにかく、今回はヴィクトリカさんが風邪をこじらせたということで久城さんの一人旅です。相変わらずのツンデレっぷりがたいへんによろしい感じですね。ヴィクトリカさんの「ぐじゃ! ぐじゃ! ちーん」というくしゃみも上手。こういう女の子のあんまり綺麗じゃない部分をあっさりと自然に書けてしまうのが女性作家の強みで、男性でこんな真似が出来るのは秋山瑞人さんくらいのものです。
そして相変わらずミステリーとしての評価は高くないようですけど、これは質が低いと言うよりも、今ある流行りはと違う方向のミステリーを書こうとしているんだという気がします。たとえば今作なんて犯人は最初から分かっているようなものですし(『明智小五郎対怪人二十一面相』並にばればれです)、不可能犯罪みたいな仕掛けがあるわけでもありません。この辺りはもう、はじめから桜庭さん自身に謎を用意する気がないように思えます。このお話で注目すべきところは、局所的なトリックや犯人ではなくて、お話全体を広い視点から見たときの「結局どういう事件だったのか」という見方です。フーダニットとかハウダニットとか言わずに、この事件にはどういう背景があって、どういう目的で行われたのかという風に考えていけば、桜庭さんの作品はなかなか綺麗なミステリーに仕上がっていると思います。