『サイコロジカル(上) 兎吊木垓輔の戯言殺し』西尾維新

サイコロジカル(上) 兎吊木垓輔の戯言殺し (講談社ノベルス)
だから「あったぼこしゅもない」ってどういう意味ですか。新明解国語辞典を引いても載ってませんよ? (いえ、検索したら見つかりましたけど)
冒頭一ページ目からいきなり、副題にもなっている兎吊木垓輔さんの一方的なお喋りがなんと14ページにも渡って延々と。その間、ストーリーに何の進展もないまま彼の台詞でページがひたすら埋まっていくわけで、これを飽きさせずにちゃんと最後まで読ませてしまう西尾さんの筆力はやっぱり相当のものですね。(もちろん最初のページで本を閉じてしまう人もいるでしょうけど、まあその辺はこれまでの三冊で大部分振るいにかけられてるでしょうし……) とにかく相変わらずの一冊という感じです。
クビツリハイスクール』は密度に妙な軽い感触がありましたけど、今回はそれほどでもなく。ミステリー分こそないものの、お話としてはそれなりに濃ゆい内容。もちろん主人公の屑っぷりも健在、『屑人間、いまだ靡かず』(GR風)とかそんな。さらには玖渚さんの存在や兎吊木さんの戯言殺しで最後の逃げ道というか言い訳である戯言まで封じられて、まさに五臓六腑が大爆発という有様です。早く死んでください今すぐ死んでください(挨拶)みたいな雰囲気がたまりません。
そういえば玖渚さんと主人公の関係は、『GOSICK』のヴィクトリカさんと一弥さんの「悪徳高利貸しからざくざくお金を貰う云々」な関係に似ていますね。後者の二人が目に入れても痛くないくらい健全な関係なのに比べて、前者の二人の関係はいかんせんどうしようもなく壊滅的ではありますけど。