『月詠 -MOON PHASE-』

月詠 ~MOON PHASE~ PHASE 1 (初回限定版) [DVD]
半年間ありがとうございましたー、と誰にともなく言ってみます。
個人的な意味で、実に性に合う作品でした。随所に溢れる遊び心やその凝り様は、単に高品質なものを作るのとは違って、製作者自身に作品への愛がなければ出来なかったことだと思います。何度もかわいいかわいいと言ってきましたけど、最後っぽいのでもう一度言いましょう。葉月ちゃんかわいー。最終話の最後のシーンはかなり冷や冷やしましたけど、最後の最後まで葉月ちゃんと耕平さんにくちづけをさせなかったスタッフの判断を讃えたいです。一貫して葉月ちゃんを年相応に扱う姿勢には男性視点に偏った嫌らしさが感じられず、大変に気持ちのいいものでした。
えっと、これもいわゆる萌えアニメに入るんだと思いますけど、そこを「逆手に取って」葉月ちゃんを魅せていくやり方が実に見事でした。たとえば、一部の層以外の人にとっては、「女の子にネコミミをつける」なんていう発想はジョーク以外の何物でもありませんよね。主題歌の『Neko Mimi Mode』だって、これがもし『Love Love Mode』のままだったらあそこまで電波電波言われなかったに違いありません。ましてや葉月ちゃんは猫とは縁もゆかりもないないヴァンパイアなんですから、この組み合わせはものすごいミスマッチです。
大方の場合、ネコミミとかそういった種のものは萌えアイテムとして使われるんだと思います。でも『月詠』のスタッフはネコミミが一種のジョークであることに気付いていて、しかもあろうことか積極的にネタにしていたように思います。葉月ちゃんは作中でことあるごとにネコミミを装着してましたけど、このときのネコミミの扱いってドリフ演出のためのヤカンやタライと酷似していました。何の説明もなくタライが落ちてくるのと同じようにして、葉月ちゃんはネコミミを付けていたのです。葉月ちゃんがスクール水着やらお洋服やらの衣装を着替えまくってファッションショーのようなことをしていた回がありましたけど、これだって萌えをネタにしている例に他なりません。他にも他にも、とにかく本作には常に萌えをメタな視点から眺める姿勢が一貫していました。スクール水着とか体操服なんかが出てきたら普通は引くか華麗にスルーするか萌えるかしかないわけですけど、『月詠』では「ネタとして笑う」ことが可能なのです。
重要なのは、萌えをメタな視点で見れていたからこそ、萌えに頼らずに葉月ちゃんの魅力を表現できていたことです。葉月ちゃんは典型的な萌えキャラでありながら、身体的なかわいらしさもちゃんと備えたキャラクターでした。あのネコミミだって萌えアイテムであるのと同時に葉月ちゃんの「装飾品」として機能していて、「ファッションとして」ちゃんとかわいいです。本人の言動にしても男の子の想像の中の女の子のそれとは一線を画していて、その手の違和感を感じることはまったくありません。アニメというジャンル自体に対する抵抗さえなければ、誰からでも受け入れられるよう描かれていたと言えるでしょう。
クオリティという意味では『サムライチャンプルー』や『AIR』には勝てませんけど、今年はじめのアニメの中では最も続きを見るのが楽しみな作品でした。とにかくいいものが見れました。きっと忘れません。