『荒野の恋 第一部 catch the tail』桜庭一樹

荒野の恋〈第1部〉catch the tail (ファミ通文庫)
ライトノベル・クイーンというオビを見て桜坂洋さんがまたおかしなこと言ってるーと思ったんですけど、読了後に一瞬納得しかけてしまいました。もう少しで戻って来れなくなるところでした。危ないところでした。
恋をミステリーとして扱ったみたいなことを桜庭さん本人が言ってましたけど、まさにという感じ。主人公・荒野ちゃんの「敵」である悠也くんを初めとして、登場人物の印象は登場するたびに本当にころころと変わります。まったく同じ人物について書かれているはずなのに、それまで見えていなかった一面がわずかに露わになっただけで荒野ちゃんがその人を見る目はもうぜんぜん違うものになってしまいまい、二転三転する荒野ちゃんの心の揺れはミステリーで言うところのどんでん返しそのものに思えます。
推定少女』や『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』に近い感性で書かれてますけど、本作はより多くの人に受け入れられそうです。上の二作がちょっと人を選ぶ奇書なら、今回は誰にでも安心して勧められる良書といっていいでしょう。これまで『GOSICK』しか読んだことのなかった人もぜひどうぞ。