『アンダカの怪造学(1) ネームレスフェニックス』日日日

アンダカの怪造学(1) ネームレス・フェニックス (角川スニーカー文庫)
任天堂に売り込む気ですか。まさにポケモン。ランク付けをしてるところとかも非常にゲーム的。この設定を使ったら本当にゲームが一本作れちゃうと思います。狂乱家族ではわりと抑え気味なネーミングでしたけど、こちらは全開ですね。いつもの(といっても二作しか読んでませんけど)日日日さん作品と同様、作品のクオリティは高水準。典型的なストーリーものライトノベルなので毛色はすこし違いますけど、他の作品を楽しめた人なら大きな外れはないと思います。
ただ何なのでしょうか、小説の出来自体とはまったく別の次元のアラが目立つ気がします。それは例えば作品を通して語られる「作者自身の」人生観のいびつさ*1であったり、怪造学を通して学問を批判しようとしている割に実際の学問のことをぜんぜん知ってなさそうなところだったりします。それこそ日日日さんの若さが原因だと言ってしまえばそれまでですけど、例えば同じくらいの年でデビューした西尾維新さんや乙一さんにはこういった悪い意味での幼さがありません。まいじゃーの中の人もこう言っていることですし作者と作品は分けて考えるべきだとは思うんですけど、その作品自体から作者自身が透けて見えちゃってるので、どうしても言葉にしがたいアレを感じずにはいられません。
まあそういうわけで色々ケチつけてやろうと思って蟻地獄的に陰湿な心構えで読み進めたんですけど、最後まで読んで何かもうどうでもよくなりました。事件の結果に呆然。いくら同時受賞で既に有名になっていて、しかもシリーズ化も決まっていたとしても、一応新人のデビュー作ですよ? カルチャーショックというか面食らったと言うか。こっちが勝手に思い描いていた展開が外れただけという話なんですけど、うーん、なにこれ。別に悪い意味ではなく、ヘンな読後感でした。いい意味で裏切られたと言えなくもなく。

以下ネタばれ反転。


主人公の思想があれだけお話的に持ち上げられていた以上、「フェニックスと最後には心が通じ合う」「追い詰められて一時は切り札(魔王)に頼ろうとするかもしれないけれど、最終的には主人公自身のやり方*2で状況を打開する」の二点だけはお約束として絶対に通過するものと思っていたので、あのあまりにも未解決すぎるラストには心底びっくり。主人公なんにもしてない。続きものだと考えれば別におかしなことでもないんですけど、この能天気なお話に限ってそれはないだろうという思い込み。アンパンマンを見ていたらバイキンマンが勝ってしまい、しかも何のフォローもなく次のお話が始まってしまったような違和感です。
あと関係ないですけど蟻馬磁獄先生は屈折したツンデレだと思いました。はい。

*1:「オンリーワン>ナンバーワン」という主張と「天才>努力」という主張がまるで同じものであるかのように語られてたり。

*2:モンスターと仲良くなるorランクに捉われないモンスター使役