『ダブルダウン勘繰郎』西尾維新

ダブルダウン勘繰郎 (講談社ノベルス)
JDCトリビュート。ページ数のためか西尾さんの作品の中ではわりと小粒ー、という前印象を持っていましたけど、そういうわけでもありませんでした。本作の場合は、その短さが逆に良い方向に作用していたと思います。
出版された当時は「あの拗ねた子の西尾がこんな真っ直ぐな話を書くなんて」と驚かれる向きもあったみたいですけど、『ネコソギラジカル』が中巻まで出た今となってはそういう声も少ないでしょう。もともと西尾さんは哀川潤さんのような熱い人物だって充分書き切ることが出来る人なので、本作にも違和感は感じませんでした。勘繰郎さんがあやめさんに用いた最後の手段が、あまりにも格好良すぎます。P111のこのシーンが、おそらくこの作品最大の見せ場でしょう。傑作と呼ぶにはストレート過ぎる、と逆に躊躇してしまうような快作。最後のページのラスト数行には、本来の意味で打ちのめされました。