『ディアスポラ』グレッグ・イーガン

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)
ガガンギガングガンゲガンゴガン。*1
噂通り難解。最初のヤチマさん誕生シーンは何となく想像できましたけど、五次元だ多次元だという話になるともう設定としてしか頭に入ってきませんでした。海外SFはこれまで四冊*2しか読んだことがないので、もうちょっと素養を磨いてから読んだ方がいいのかなとも思ってましたけど、これは最早そういうレベルの本じゃありません。お手上げ。
というわけで理解度はすごく浅いんですけど、それでも面白くて仕方がありません。これだけ読むのに時間がかかるのに、先の気になること気になること。人々がこぞってSFを読む理由が、ちょっと分かってきた気がします。分からなくてもこれだけ面白いんですから、これでさらに数学・物理的な理屈の部分もしっかり理解できていればと思うと逆に残念に思えてきました。
SF部分は難解ですけど、文章自体はわりと平易。難解な部分にはあまりこだわらず軽く流し読めるのであれば、川上稔さんの『都市』シリーズや『終わりのクロニクル』よりも余程読みやすいかもしれません。こういった超越的な世界に生きる人々の心理はSFでしか書けないものなので、SF部分と小説部分がしっかり結びついているのはさすが。あと解説の大森望さんはおいしいとこを取りすぎです。途中で思いついたこと、既にほとんどこの人が書いちゃってました。
ところでこのお話の登場人物の多くには、厳密な意味での性別が存在しません。最初主人公のヤチマさんのことは礼儀正しい男性のイメージだったんですけど、途中から頭の中で「微妙にはにかみつつ喋るちんまい女の子」に再設定したら壮絶な萌えキャラに変貌しましたよ。わぁい。

*1:理解の範疇を超えた概念に触れたときに魔族が思わず発してしまう溜息のようなもの。

*2:幼年期の終わり』『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』『星を継ぐもの』『禅銃』