『きみとぼくの壊れた世界』西尾維新

きみとぼくの壊れた世界 (講談社ノベルス)
ぐぇー。
これまたアレな小説を書いちゃったものですね。「えげつない」と形容しても、きっと大げさにはならないと思います。希望に満ちているように見えて、実はもう全てが取り返しのつかないくらいに絶たれている状態。救いを求める人を救いようのない場所に救い上げるようなものです。最悪です。『クビシメロマンチスト』なんかも大概アレでしたけど、さらにその先まで行ってしまった感じ。この作品がおそらくは計算づくで作られているというあたりに、如何ともし難いアレを感じます。アレ。
という風にさんざん誉めておいてからこう言うのも何ですけど*1、これだけ胸の悪くなるなるようなお話であるにも関わらず、その全てがネガティブだとはどうしても思えませんでした。取り返しのつかない、どうしようもないものが描かれていることに間違いはありません。でもだからといって、そこにある「一見希望のようにみえるもの」まで全くの偽りと断じてしまうことも、やっぱりどこか早計という気がします。希望を模した断絶を見せるという西尾さんの意図は分かるんですけど、そこからさらに一周してもう一度希望を見出せたりはしないのかなと。むー、何言いたいのか分かりませんね。モーラトーリアーム。
他の人の感想を眺めてみても、やっぱり受け取り方は一定してない様子。多いとは言えませんけど、「爽やか」とか「いい話」なんていう意見もあるくらいです。そういえばミステリーとしての評価も案の定分かれているみたいで、「ミステリー分はオマケ」だったり「久々にすごいミステリーを読んだ」だったり。前者の意見の人には「ミステリー=推理小説=トリック」という軸で考えている人が多い気がしました。

*1:いえ、だから誉めてるんですって。