『太めの竜にまたがって』

 ある世界の始まりから終わりまでを描いたような感じの小話。リンク先から読めます。

 まずタイトルが面白くて、かっこいいのか間抜けなのか分かりません。いえ「太めの竜」というフレーズは多分間抜けなんですけど、「太めの竜にまたがって」と自信満々に言い切っちゃうことで、実はこのフレーズはかっこいいんだぞと錯覚させてしまいます。

 この作品には三柱の神様が登場しますけど、彼らは「ゆらぎの神話」に由来する神格です。とは言っても、「ゼウス」や「オーディン」などの既存の神格に特定のキャラクターが存在しないように、「ゆらぎの神話」の神々も特定のキャラクターに固定されてはいません。つまり描かれる度に彼らのキャラクターは微妙に(または大胆に)変動するわけで、元ネタとしての神話を知っている人はその辺のギャップを楽しむこともできるでしょう。

 たとえばこの作品に登場するアレという神様は、「ゆらぎの神話」では主に老人として認識されている神格です。そのことを知っていれば、アレ神とキュトス神の関係は一組の男女というよりも祖父と孫という組み合わせにも見えてきて、終盤の展開にもまた違った切なさを見出すことができるようになるのです。