あなたたち人間の外見はあまりにも没個性です

 私が地球に来てとにかく驚いたのは、人間の外見があまりにも没個性的だったことです。彼らはほぼ例外なく目が二つしかなく、口はひとつ、腕も脚も二本ずつです。体の色にしても、たまに黒い人がいる程度。そして極めつけは、なんと指の数すらきっかり五本と決まっていること。それが一本多かったり少なかったりするだけで神聖視されたり逆に迫害されたりするそうです。そんな人間ですから、顔はおろか全身をくまなく眺めてみたところで、とても個人の識別なんて出来はしません。

 じゃあどうやって彼らが自分たちの個性をアピールしているかというと、これが傑作なんですけれど、なんと様々な色の布や石を体中にくっつけることが彼らにとってのファッションなんだそうです。あとは自分の髪の毛を好きな色に塗り替えたり、形を変えたり(それも自力で髪を動かす力を持たないので、薬品で形を固定するそうです!)といった涙ぐましい努力をしているんだとか……。これらの布や石や薬品は、人間社会の一大産業になっています。

 ……そしてこういった個性化のための最後の試みさえ、少し程度を超えると徹底的に糾弾されるというのが彼らの社会。もうまさに末期のディストピアという感じで、秩序の【竜】を礼賛するのも行くとろこまで行くとこうなってしまうんですよというモデルケースだと思います。ああ、やっぱり私たちは混沌の【猫】を選んで正解でしたね。そう言ってる間にお出かけの時間。さて、今日の触手は何本にしようかな。