『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』

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 はい、今さらですけど頭かち割られてきましたよ。並みの作品なら、よく知らない人に感想読んでもらうために軽い紹介を交えつつ話を進めたりするんですけど、このくらいメジャーになると説明の必要なんてまったくなくて好きにかけるのがいいですね。てゆうか既に話題に乗り遅れまくってますけど。

 終盤のアレはももちろんそうなんですけれど、序盤も意外と印象に残るところが多かったです。予想以上に原作どおりで、記憶を引き写したかのような、「この構図たしかに見たなー」というシーンで目白押しでした。戦闘シーンなどはかなりグレードアップてした感じですけれど、単に派手にしたり無闇に書き込んだりしても仕方のない人物アップなどは特に「旧エヴァそのまま」の印象が顕著でした。

 展開としては、旧版を見てない人でもぎりぎり気付くかなどうかなという程度に急ぎ足のダイジェスト。ここまでするなら、中途半端にならないようにいっそあからさまにダイジェスト感を出していってもよかったかも……とは思いました。 

 旧版をビデオで初めてみたときと比べ、自分の作品の見方も色々変わったなーということを凄く実感しました。今回特に強く感じたのは、「この人たち危ない橋渡ってるなあ」「ていうかむしろ異常に運良くない?」という印象。

 だって「九死に一生を得る」ような出来事があまりにも多いんですもん。たとえば冒頭のシーンにしても、エヴァに乗る前から使徒の攻撃とN2地雷のコンボで軽く数回は死に掛かってます。生き延びたのも単なる偶然、何か勝機があったわけではなく運がよかっただけのようにしか思えません。いざ本戦となっても、エヴァが歩いただけで大喝采という有様ですし。

 アニメの作劇上、ピンチをギリギリで切り抜ける演出があったからといってその確率をそのまま受け止める必要もないんですけれど、それにしても今回はあまりにも「九死に一生」が目立っているようにも思えました。これはダイジェストでお話の展開が加速してるからそう見えてしまうのかもしれません。

 でも逆に、こうもほいほい「幸運に助けられる」事態が続くと、実は何らかの力が働いた結果としての予定調和なんじゃないかという思いも湧いてきます。実際、この新劇場版は旧版のシナリオを登場人物たちが忠実に再現しているとか、演じ直しているとかいうオチである可能性も考えられるわけですしね。どんなピンチに陥っても結局生き延びることは最初から決まっている……とか、そういう印象を強調したかったのではと考えるのは穿ちすぎかもしれませんけど。