『ねくろまねすく(1)』
リビングデッドとマッドサイエンティストたちによる、「あっちの世界」の日常漫画。少なくとものこの一巻の時点ではストーリー漫画と呼べるほどの展開はありません。
主人公たちはねぐらのアパートでどったんばったんとラブコメやったり、社会の日陰者として心を温めあったりします。その一方秋葉原でチンピラにレイプされそうになったり、敵のネクロフォビックなマッドサイエンティストに人格改造されそうになったりもします。
でもそういう出来事も含めて、全体の雰囲気はわりと「日常」という感じ。もちろんそれは「私たち」から見た日常ではなく、世の中のイレギュラーである「彼ら」にとっての日常です。ねぐらのアパートを中心としてのほほんとラブコメやりつつも、彼らの日常は私たちのものとはどこか決定的に異なります。
「イレギュラーが人の温かさに触れて立ち直る」と言うタイプの作品では、彼らは往々にして「私たちの感覚で言う温かさ」に引き寄せられて安定を得ます。でも玉置さんはやり方が違っていて、彼らを「あちら側」に置いたまま、あちら側の人どうしの交流によって温もりに導きます。
日常を描くからといって安易に「私たちの感覚」に引き寄せたり押し付けたりせず、彼らをあくまで彼らとして描いているのがさすが玉置さんだと思います。私たちから見てそれが歪んでいるように見えようと、彼らにとって自然であるからこその救いというものもあるのだと思います。