『独白するユニバーサル横メルカトル』

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)

 ホラー短編集? と言ってもお風呂場で目を瞑れなくなるような「怖さ」ではなくて、どちらかというと不快とか嫌悪とかそういう感情を喚起する方向性。奇形とか死体とか乞食とか拷問とか汚物とか血反吐とか、なんか感性が物凄くやくざ屋さん。サイコに知的な人物も折々に登場してなかなか印象的なんですが、彼らもなんかインテリヤクザっていう風情ですし。ヤクザホラー。

 そんなヤクザな感性でありながらも文体は丁寧に作られていて、しかも技巧的です。どのお話も奇想に彩られていて、そこにはある意味ボルヘス的な趣すらあるかもしれません。SF作家も幻想作家も奇想によってまだ見ぬ世界を表現しようとしているわけですが、平山さんの場合はそのベースがスプラッタ的嫌悪感に置かれているという。ベースがどぎついジャンクなので、それ一色の作風という印象をまず持ってしまいますが、その実かなり豊穣な要素を含んだ作家さんなのだと思います。