『STEINS;GATE』(アニメ版)

 来月からシュタゲの新作アニメが始まると知り、そういばだいぶ前に前作のアニメ観て感想も書いたのにアップしてなかったな……と思い出して掘り返しました。前評判が良かったから、あと志倉さんがうみねこ散の作詞とかやっててちょっと気になってる人だったから、くらいの気持ちでアニメ版を見始めたんですが、やっぱり異様に面白かったです。後半はラスト5話と映画版をまとめて一気視聴してしまいました。

 前半1クールは後半の展開のために伏線をひたすら張っていく流れで、試作型タイムマシンを巡る会話劇をぐだぐだやるエピソードが主だったと思うのですが、そのくせ一話一話の体感時間が妙に短くて、益体のない会話の連続なのに退屈を感じるどころか「え? もう1話終わり?」と思うことが多かったです。「後半から一気に面白くなるからまずはそこまで見て」みたいな紹介する必要なくていいですね。

 中盤のある出来事以降は明らかに作品の雰囲気が変わり、タイムスリップものとしての展開が本格化するのですが、ここらかは本当にあっという間でした。前半に敷かれた伏線がラストイン・ファーストアウト形式で順番に回収されいくのは気持ちいいですし、そういう流れならいちばん最初に描かれた伏線がいちばん最後に最大のジレンマとなって立ち現れるというのも熱い。科学考証はびっくりするくらいデタラメでも、作品としてのルール自体は手厚く示されているのでパズル的には納得感があり、想定科学ADVという売り文句も伊達ではないなかったです。

 見てる間にキャラクターにわりと愛着が湧いてしまったのですが、岡部氏がやっぱり良いですね。ひたすら与太話を繰り返してる前半と、大事なものを失って無様に駆けずり回るようになった後半のギャップには来るものがあるし、宮野真守さんの演技もすごく良い。途中からメンタルがぐっちゃぐっちゃになってきたあたりの声、かなりこみ上げるものがありました。

 この手のキャラって物語を通して最終的に「大人」になって中二病的言動を「卒業」しちゃうパターンも多いと思うんですが、そうならず最終的に鳳凰院凶真に戻ってくるのも私好みです。マッドサイエンティストの真似をしすぎて遂に映画版で「あんな発明はこの世に存在してはならない……」的なこと言い出すのも一周回ってあっちに行っちゃった賢者みたいな感じで好きです。

 映画の方は、紅莉栖の思考のブレや躊躇が話の展開にブレーキをかけてしまうようなところがあって、本編ほどテンポや構成が良いとは感じませんでしたが*1、本編に対する「アフター」ものとして綺麗にできていたと思います。

 主人公がループを繰り返すタイプの作品ってどうしても倫理観が現世的な人間のそれから乖離して、そのままクライマックスに突っ込んでいったりするので、「本編で零れ落ちたもの」を拾い上げる外伝的作品がやたら面白くなったりするんですよね*2。世界の危機とか大きな風呂敷は広げず、本編で岡部氏が必死こいて救おうとした紅莉栖たちが今度は彼を救う側に回る展開、ベタながらめちゃくちゃ感情のある流れで、良い……ってなりました。

*1:あとまゆしぃが岡部氏の不在に結構淡白なのもちょっと悲しいな……とは思いましたが、あの子は紅莉栖が目の前で無茶して苦しんでたら(それが岡部のためであっても)まずは目の前の紅莉栖の無茶を止めて苦しまなくて良いと諭すような子だと思うので、あれはあれで彼女らしいのかもしれません。

*2:ぱっと思いつくのは『ひぐらしのなく頃に』のクリア後番外編である賽殺し編とか。