『人間失格』

人間失格 (新潮文庫)
これまで『走れメロス』くらいしか知らなかったんですけど、三島由紀夫さんを読んだのをいい機会にこちらにも手を伸ばしてみました。
スーサイドしたとき恋人だけ死んだとか例によって歪んだ前情報を持って挑んだんですけど、意外とイメージ通りのお話でした。「恥の多い人生を送ってきました」とか、この出だしからしてステキすぎます。ダメ人間ハートをわし掴み。零崎さんちの人識さんが「やっぱ芥川より太宰だよな」とか言うのも頷けますね。生まれてすいません。
鬱々した感じがとても心地良かったんですけど、この作品は太宰さんが自殺の直前に書いたものらしいですね。ということは太宰さんの作品の中で本書がいちばん後ろ向きということになるわけで、その点はちょっと残念。この人には、本書のような方向性をもっと極めてもらいたかったです。
文体は意外と読みやすくて、妙に言い回しの濃ゆかった三島さんとは対照的でした。このくらいに平易な文章なら、中高生でも容易に理解できそうですね。たち悪っ。「ダメ人間だけどなぜか女性にはもてる」主人公の造型が何かの暗喩のような気がして仕方ない私は、いろいろ致命的に毒されている気がします。とりあえず例によって、太宰さんは哀川潤さんに根性たたき直されればいいと思いました。