『リリカル・ミステリー 盤上の四重奏 ガールズレビュー』

盤上の四重奏 〜ガールズレビュー〜 リリカル・ミステリー (コバルト文庫)
暗示使いで名前が都……ってこれは一体どこの『ミヤコ・アーカイブ』ですか。ミヤコ・アーカイブステッパーズ・ストップのページ最下部の方に置いてあるのでみんな読めばいいと思います。とても面白い形而上バトルものです。シンヤも出るよ!
えーと、例によってコバルト文庫リリカル・ミステリーの第三弾。ラスト付近まで大きな事件が起こらないため、展開としては少し大人しい印象。けれど蓋を開けてみると、中身はやっぱり相変わらずのリリカル・ミステリーです。お話の構造としてはストーリーを牽引する謎がくるくると入れ替わる『春待ちの姫君たち』よりも、中盤まで静かな情景を重ねて終盤で一気に回収する『白い花の舞い散る時間』に近いものでした。
冒頭で主人公の都さんが「言葉の威力」について一説ぶちますけれど、クライマックスの夜の会話がこれを証明してますね。いわゆる言霊とはちょっと違う、迫真というよりも技巧的な言語表現。『春待ちの姫君たち』でもその片鱗が見えましたけど、今回はその本領がまさに発揮されていました。道具としてのギミックも何もないのに、言葉遣いひとつでこっちは翻弄されっぱなしです。
白い花の舞い散る時間』に連なる物語ということで、二作間の関係が種明かしやミスリードに惜しみなく使われています。どちらから先に読むのが面白いかは難しい問題ですけど、私は前作の人間関係を適度に忘れていたおかげでいい感じに騙されることができましたよ。前作の記憶が曖昧な人は、本書の読了後にラストだけでも読み返してみることをお勧めします。
デビュー作の衝撃がひとおしだっただけに一発屋の不安も囁かれた友桐さんですけど、ここまで良作が揃うともう安心。これからは完全な安定株として、安心して読んでいけそうです。一冊三ヶ月という比較的速い執筆ペースも嬉しいです。とりあえずガールズレビューはシリーズ化してもらいたいです。