『陽気なギャングが地球を回す』

伊坂さん三冊目。なるほど、これは分かりやすい良作ですね。『オーデュボンの祈り』はなまじ推理小説的な体裁を取っている分オチに癖がありましたし、『ラッシュライフ』にはちょっと明確な捉えどころがありません。その点、伏線張りまくりでストーリー一直線な上、語り口も軽快な本作はとっても取っ付きやすかったと思います。伊坂さんが大きく注目されはじめたのがこの作品からというのにも納得できました。とりあえず他の単行本も早く文庫に落としてください。
例によって絵に描いたような極悪人が途中で登場。こういうところ、たしかに凄く寓話的ですね。多くの人から強い支持を得る一方で、ちょっと斜に構えたような態度に言いようのない嫌悪感を抱く人がいるというのも分かる気がします。つまりは「人生分かったような顔して格好つけやがってこの野郎」ということなんでしょうけど、こういう生理的なものはいかんともしがたいことなのだと思います。ただ『オーデュボンの祈り』の率直すぎるメッセージや本作の久遠さんの主張なんかを見ていると、あながち皮肉だけでこういった警句を並べているわけではなく割りと真剣に言ってるような気もします。きっと伊坂さんは斜に構えているように見られてしまう星の下に生まれたんだと思いましたなんとなく。あと表紙絵のギャングが作中の描写と全然違うんですけど、そんなことは単行本の時点でとっくに既出ですかそうですか。