『ゆびさきミルクティー(3)』

ゆびさきミルクティー 3 (ジェッツコミックス)
すごい。はじめこそネタ漫画としてこの作者頭おかしいとか言いながら読んでましたけど、もうその余裕がありません。

登場人物の言動の整合性はたしかに破綻していて、散々引っ張ってやっと決意したことを直後にあっさり覆しちゃったりということがままあります。でもこの作品の場合はそんな展開に違和感を覚えることはなく、逆にその支離滅裂さ自体があまりにも真に迫っている印象を受けました。これは単に作者の気まぐれで展開があっち行ったりこっち行ったりした結果の「破綻」ではなくて、人間の感情をトレースし過ぎた結果としての「破綻」なのではという気がします。

白翁さんの言うところのくちさきミルクティーという表現はたしかに的を得ていて、きっとこのお話には「物語」の発想が欠落してるのだと思います。

この作品に配置されたキャラクターは、物語の道筋に従うのではなくあくまで「自分自身の目的」のために行動します。その行動の結果としてキャラクターが変化したり成長したりということはあるのかもしれませんけれど、そこには作品全体を通じてお話を制御しようとする「物語」の意志がありません。この作品はプロットに基づいて語られる一本の物語ではなくて、むしろ初期配置だけを決めて後は観察されるだけの箱庭シミュレーションに近いのではないかと思いました。