『神話と意味』

神話と意味 (みすずライブラリー)

 構造主義の先駆者、レヴィ=ストロースさんのラジオ公演を文章に起こしたもの。話し言葉、それもレヴィさんの地元仏語でなく英語を用いて語られているので、あまり突っ込んだ内容には踏み込まれていません。その反面、表現は非常に簡潔・明瞭で、レヴィさんや構造主義への入門にはもってこいの一冊、らしいです。

 理論レベルのお話はさすが端正で隙がありません。ふとすると当然のことを言っているようにも思えてしまうんですけれど、それを語る際の厳密さ、切り口の鮮やかさなど、精度の高さが印象に残りました。身内にしか分からない用語をほとんど使わずに本質を説明しえているのも、深い理解があってこそのことだと思います。

 一方、実際の神話*1を取り上げての具体的な話になると、牽強付会に感じられる主張が多くなったように思えました。いわば、"⇔"の証明が必要なところで"⇒"しか証明されていないように感じられたのです。

 ただし、本書では幅の関係で最小限の説明しか述べられなかっただけで、実際はフィールドワークで得た様々な傍証があるのかもしれません。尺の都合もあって、その辺りの細かい話に切り込めなかったのは少し残念でした。神話学の基礎にもなりそうなところなので、たいへん気になるところです。

 私の理解としては、何を言われたのか抽象的には理解できるんですけど、自分の言葉で具体的に言語化するにはまだまだ至れない感じです。そういえば今私の手元に偶然たまたま『はじめての構造主義』なんてご本があるので、こっちの方も機を見て読んでみようと思った次第です。

*1:双子と兎唇の関係。