魔王メモ:紀仙と魔王

 紀仙様はまたこう言われました。
「お腹が空いても腹と背中がくっつくことはない。なぜなら恋する二人の間にはあの悪辣狡猾なず太い背骨が何対ものあばら骨を広げて立ち塞がっているからである。コーラだ! コーラを飲め!」
 尊紀のお言葉の益体なき事おびただしく、かくも空疎な口述筆記の任に与りし我が身を呪うばかりなりです。文語とか分かりません。
「しかしコーラで骨が溶けるとの言は迷信なり。是にて数多の背と腹の思い成らず、皆して滂沱の涙を流してざぶんと池へどんぶらこ」
「紀仙様はなんでこう、身も実もないしょうもない妄言を次から次へと垂れ流せますか。絶え難き事沼の泉って感じですけど、その泉に秘事の御業などあらばぜひ拝聴したいものですね。日記に使えるので」
「元ネタはね、あれだ。君が前紹介してくれたやつ」
「なんですか」
「あれだ、はてなブックマーク
「さいですか」
 人の人たるを、悟の悟たるを追求したなれの果て、万尊たるお方をしてこの有様です。人生とは何かという問いの答えの現前に空しさを感じつつ、紀仙様のコーラ瓶にこっそりメントスを仕込む私でありました。