『オデッセイ(The Martian)』

 観てきました原作未読。火星にひとりぼっちで取り残された植物学者マンが科学知識とポジティブシンキングでめちゃくちゃ頑張って生き抜いてる間に地球人がガヤガヤやって生還を手伝う話。すごい面白かったです。

 基本的に人の死なない話だし、救出プロジェクトを露骨に邪魔する悪役も出てきません。なにより、立場や利害の違いはあれど全ての登場人物が主人公ワトニーの生還を願っていて、たまに一悶着あっても誰かが機転を利かせて即座に流れを戻してくれる展開が気持ちよいです。

 救計画を変更せざるを得ない大きなアクシデントも2回ほど起こりはしますが、基本的に物語は「ワトニーの生還」に向けて余計な蛇行をすることなく一直線に進みます。必要な問題をひとつひとつ解決していくことで着実に前に進んでいく、という脚本で、淡々としていると言えばそうなのですが、退屈することは全くありませんでした。最後は生還してハッピーエンドになるなんてことは分かりきっているのに、ワトニーが「確保」されたときは自分でびっくりするくらいホッとしていました。

「人間一人が火星でサバイバルして生きて帰ってくる」ことはそれだけ困難な目標だから、悪役に邪魔させて目的への道を遠回りさせたり、執拗に登場人物同士の対立を描いたりしなくても、映画一本分の物語に仕立てるには十分ということなのでしょう。しっかりと配置された複雑さは物語に深みを持たせますが、そういうものを思いきり切り捨てて、別のなんかすごいものを見せることのできた作品だと思います。