『世界の終わりの魔法使い』西島大介

世界の終わりの魔法使い (九龍COMICS)
ぷー。
とても透明。どこにも引っ掛かりがなくて、ぼうっと読んでいると何にも気づかないまま最後までストンと落ちてしまいそうな感覚。というか、私の場合どうも本当にストンと落ちてしまったみたいで、何らかの感想を抱く前にお話が終わってしまいました。これはたぶん作品がどうこうじゃなくて、単に私が核をうまくつかみ切れなかったという読み手側の問題です。読むことに失敗したと言うか、「西島大介に失敗しました」みたいな。読んでいるだけでも心地よいお話なので、それだけでも値段分の価値はあったと思いますけど、それだけではない何かがあることも間違いなく。『凹村戦争』のときも最初は何かよく分からないまま読み進め、ラストの20%くらいのところで何となくピンと来るものがあって感動したーという按配だったので、これもその内何かの拍子に何らかの感想が湧くことをなんとなく祈っておきます。

  • すごく書き足りない感があったから追記します。「どうして私はピンと来ることができなかったのか」についてなので、かなり自分語りな内容です。ご注意くださいー。

河出書房出版の西島大介インタビューとかはてなのISBNページからの言及リンクを巡って、これが村上春樹さんやサリンジャーさんの小説と同じ書かれ方をしていることを何となく理解。(主人公の名前もムギですし) 村上春樹さんはいまだに未読ですけど、何年か前に『ライ麦畑で捕まえて』を読もうとして、何が書いてあるのかさっぱり分からなくて半分くらいで挫折したのを思い出しました。どうも私、この手の読み物には慣れてないみたいです。
もうひとつ多かったのは、西島さん本人が述べているとおりストーリーが分かりやすいということで、これは意外な意見でした。たしかに「失った自信を取り戻す」みたいな物語ではありますし、そういう見方をすれば『凹村戦争』よりも理解しやすいものになっています。どうやら、私にはお話を構造だけ抜き出して認識する能力が著しく足りてないようで、そういえば大塚英志さんの物語論にしても読み物としては面白いんですけど、どこか自分の読み方とは関係のない他人ごとのような感覚で見ていたりします。
そういことで、フィーリングだけでものを読むのにも限界がある気がしてきた近頃です。ひとまず、いつでも読めるからと何となく敬遠していた村上春樹さんあたりから入ってみようかと思います。