『狂乱家族日記 四さつめ』

狂乱家族日記四さつめ (ファミ通文庫)
雹霞さん千花さんメインのお話。頁数はいきなりの四百七十ページ。川上さんのせいで感覚麻痺してましたけど、よく考えたらこれってかなり分厚い部類に入るんですね。後日談としての日記はともかく、本編の時系列までばらばらな構成になっているのは一長一短でしょうか。Dr.ゲボックと平塚雷蝶*1の二本軸展開ですけど、一冊に纏める必然性もあまりないので別々のお話として描いた方がよかったのではという気も。
瑕疵をちらつかせ試行錯誤しつつも、少しずつ面白くなっていると思います。相変わらず何かメタレベルでのバランス不足がいろいろ祟ってる気がしますけど、まあそろそろ慣れてきたのでほどほどに見守りたいです。初期の作品であまりにも露骨に滲み出ていたヘンに幼稚なレッテル主張はもうぜんぜん目立たなくなり、それだけでもとても読みやすくなりました。ただ、登場する科学者連中が「学問に触れたことのない人間がイメージするTVドラマに出てきそうな悪徳科学者」としてしか描かれていないのはちょっとひっかかりました。探究心しかないような人間は虐殺シーンを面白おかしく語って笑ったりしないでしょうとか。悪役にするためのキャラ付けと言われてしまえばそれまでですけど、うーん。
今回はいつにも増して、凶華さんのいいお母さんっぷりが格好良かったです。とうとう分身の術までマスターしてやってることはますます人外なのに、キャラとしてはどんどん普通人になっていっちゃいますね。ボケにツッコまれてる姿がそろそろ不憫に思えてきました。月香さんは相変わらずのトリックスターかつデウス・エクス・マキナでいつ出てくるかとても楽しみ。でも今回いちばんの破壊力だったのはやっぱり五重必殺学園ですね。第二章の導入部分は凄すぎたと思います。

*1:なんて名前……。親族から抗議が来ても知りませんよ。太陽太陽。