『ポーの一族(2)』

ポーの一族 (2) (小学館文庫)
ひゃー。やっぱりすごい。

作品の中心となるポー家は不老の一族で、その性質のために私たち人間とは異なる時間を生きています。彼らは人間からすれば異形の存在に違いなく、普段は人の中に混じって生活しつつも根本的な部分での思考は全く異なります。決して人間たちと相容ることのできない一族は、常に深い孤立を抱えて生きています。

といって、一族が必ずしも神のような超越的な存在というわけでもありません。彼らはわゆる吸血鬼で、死ぬときはやはり死にます。長い時間の中で一族から欠けていく者も決して少なくはなく、彼らもやはり歴史に翻弄される存在に過ぎないのだということを思い知らされます。それが何とも物悲しいです。人の一生をはるかに越える長期的な視点から語られるからこそ、歴史の無常がより克明に見えてくるというところもあるのでしょう。

森博嗣さんが「『ピカデリー七時』は100万円の価値のあるコピィだ」みたいなことを言っていて、どうにもその辺の感覚がよく分からないなあと思ってたんですけど、お話の内容を読んでみて納得しました。たしかに、こういう背景があって『ピカデリー七時』というタイトルを付けたのなら、森さんが喜ぶのもさもありなんだなあ、みたいな。