『ひぐらしのなく頃に解 罪滅し編(1)』

ひぐらしのなく頃に解 罪滅し編 (1)

 ひぐらし解決編のコミカライズ第二段。

 鬼隠し編と同様、絵が不安定で崩れがちなのが残念なところ。決めゴマにはいい絵もあるんですけれど、「普段の何気ない表現の積み重ね」というところには至っていない印象があります。

 今回の主人公のレナさんは、傍目には能天気でありながら、実は非常に鋭利な思考力を隠し持っているキャラクターです。日常にあっては周囲への絶妙な気配りという形でその能力をひそかに発揮している彼女ですけれど、ひとたび非日常的な事態が降りかかったとき、それは過激なまでの行動力と決断力を伴って発現します。

 ただし、そういった彼女の内実は文章媒体の原作だからこそ存分に表現できたもので、モノローグもほどほどに抑えなければならない漫画版*1にはやはり分の悪いところがあったかもしれません。本作のレナさんには「隠し研いでいた爪を顕わにする」といった凄みはなく、「普段は能天気な女の子が追い詰められて逆上した」ように見えてしまったというのが正直なところです。

 意識的に原作との差を出しているように見受けられたのは、本編初登場のキャラクターであるリナさんの描かれ方。原作やアニメでは一貫していわゆる「ビッチー」*2な癖の悪さを感じさせる女性として描かれているんですけれど、本作の序盤ではそういった描写が極力抑えられています。なんか「普通のお姉さん」という感じで、悪女どころか善い人そうに見せようという意図すら感じられます。

 どう見てもいかがわしいリナさんに対してレナさんが不安を強めていくというのが原作の展開なんですけれど、漫画版ではその辺のところを描写する余裕がありません。彼女に不信を抱かせる描写を省くことで構図がシンプルになり、全体としてのバランスはうまい形にまとまったように思えます。ビッチーっぽさのないリナさんの造型というのも、なかなかに新鮮した。

*1:ついでにアニメ版も。

*2:いけませんね。なんて言葉を。