『氷と炎の歌 七王国の玉座V』

七王国の玉座〈5〉―氷と炎の歌〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)

 バァーン! 第一部・完!

 既に大作ひとつを読みきったくらいの興奮がありますけれど、まだこれで第一部です。序章です。もう目が回るったらありません。

 敵/味方の軸を微妙にずらしてくれる作品の視点が面白いです。権謀術数渦巻く王国の中にあって質実剛健を貫こうとするスターク家は、このお話の「主人公」的な存在として位置付けられています。視点人物として登場するのもこのスターク家の面々なんですけれど、現時点で二人だけの例外が存在します。

 一人はスターク家の「政敵」ラニスター家に属する醜男ティリオンさん。もう一人は現「王国」に王位を簒奪され復権のために動く「外敵」である元王女デーナリスさん。絶妙なタイミングで挿入されるこの二人の視点は、ともすれば「良きスターク家と悪しきラニスター家」という狭い構図にとらわれがちになる物語に「外側」があることを思い出させてくれます。*1

 敵・味方といった区別をせず両陣営まんべんなく描くのも混迷具合が増していいんですけど、こういう風にわざと視点に偏りを持たせた構成もアンバランスさがあって面白いです。一方の陣営に感情移入させつつ、時として冷静に突き放す手つきは一種の恐怖。

 それにしてもにくい! もの覚えの悪い自分の頭がにくいです! 早く先を読み進めたいのは山々ですけど、どうしても誰だったか思い出せないキャラクターもぼちぼちと出始めました。傑作を更に従前に楽しむためにも、やっぱり再読は必要かもです。

*1:あと、スターク家の一員ではありながら国内の混乱から離れた北の壁で人外の脅威と戦うジョンさんも「外側」の視点を教えてくれる一人ですね。